定年退職した国家公務員の5人に1人は赤字で生活苦(退職公務員生活状況調査)

令和5年 退職公務員生活状況調査報告書(令和6年3月)人事院事務総局給与局生涯設計課をまとめます。

調査の目的

国家公務員の定年退職後における就業の状況(暫定再任用、民間企業等への再就職など)及び収入・支出等の生活状況を把握することにより、今後の高齢期雇用等の在り方や職員の生涯設計に関する施策等を全般的に検討するための基礎資料を得ることを目的とする。

調査対象人員は定年退職した国家公務員7,144人

一般職国家公務員で、令和4年度末に 60 歳で定年退職した者及び令和4年度に60歳に達し令和5年7月31日までの間に勤務延長した後に退職(以下単に「定年退職」という。)した者のうち、調査実施時点で所在が確認できた 7,144人を対象とした。

定年退職後も働きたいが8割を超える

  • 定年退職後も働きたいと思った者は 83.3%(前回 86.6%)であり、前回と同様に8割を超えている。
    働きたいと思った理由(複数回答)として「日々の生計維持のために必要」と回答した者の割合が 85.7%(前回 85.0%)で、前回調査と同様に最も高くなっている。また、経済的な理由以外では、「社会との接点や生活の張り・生きがいを持ちたい」が 44.0%(前回 43.4%)、「仕事を通じて社会や職場に貢献したい」が 34.4%(前回 32.8%)、「健康維持のために必要」が 31.4%(前回 31.6%)などとなっている。
  • 働きたいと思った勤務形態は、「フルタイム勤務」が 55.1%(前回 56.6%)、「短時間勤務」が 33.9%(前回 36.8%)となっており、前回調査と同じ傾向となっている。
  • 「定年後も働きたいと思った」者では、「65 歳まで働きたい」とする者が 45.1%(前回 35.0%)で最も多かった。また、「年齢に関係なく、働けるうちはいつまでも働きたい」とする者が 24.0%(前回 20.8%)、「70 歳まで働きたい」とする者が 12.2%(前回 7.9%)となっており、この両回答を合わせた 65 歳以降まで働きたい者の割合が36.2%で、前回(28.7%)より 7.5 ポイント増加している。これに、「65 歳まで働きたい」を加えると 81.3%と 8 割を超える。

現在の就労状況

  • 調査時点(令和5年9月1日)において収入を伴う仕事に就いている者の割合は、87.6%(前回 89.6%)となっている。また「定年退職後は働きたいと思わなかった」者でも54.1%が収入を伴う仕事に就いている。
    現在収入を伴う仕事に就いていない理由(複数回答)は、「しばらく休んだ後、また考えたい」が 43.3%(前回 46.7%)と最も多い。次いで、「働かなくても生活していける」が 33.3%(前回28.9%)、「仕事以外にやりたいことがある」が25.2%(前回 23.4%)となっている。
  • 収入を伴う仕事に就いている者の就労先は、「国の機関(行政執行法人を含む。)の暫定再任用職員」が 79.2%(前回81.0%)となっている。民間企業は10.6%(前回10.3%)で、今回初めて選択肢を入れた「士業等資格を活用した独立」は2.3%であった。
  • 就労先における勤務形態は、就労先全体で、フルタイム勤務が 58.5%、短時間勤務が41.5%。就労先が民間企業である場合にはフルタイム勤務が89.3%であるのに対し、就労先が国の機関の暫定再任用職員の場合にはフルタイム勤務は53.6%となっており、35ポイントを超える差が生じている。
  • 短時間勤務となった事情(複数回答)は、「退職で一区切りついたので、仕事量を減らしたいと思った」が 64.4%(前回 58.0%)で最も多く、次いで、「自分の健康状態を考慮した」が26.1%(前回23.1%)となっている。
  • 短時間勤務者の1週間当たりの勤務時間は、「週31時間以上」(88.3%)が最も多く、次いで「週23時間15分以上週31時間未満」(8.7%)となっている。

定年退職者の多くが国の機関への再任用職員となっている

  • 暫定再任用職員のうち、給与法適用職員は96.5%、行政執行法人職員は3.2%となっている。また、給与法適用職員における適用俸給表は、行政職俸給表(一)が55.9%で最も多い。次いで税務職俸給表が19.2%と、前回(0.6%)より大幅に増加しているが、これは、今回の調査で7 月まで勤務延長した後に退職した税務職員を対象に加えたことによるもの。
  • 暫定再任用を希望した理由(複数回答)は、「在職中の知識・経験等を活用したい」が66.2%と最も多く、次いで「慣れ親しんだ職場で働きたい」が58.9%となっている。また、「自分の知識・経験等からすると公務外への就職は難しい」との回答も34.7%あった。
  • 暫定再任用に伴って転居しなかった者は82.8%、転居した者は17.0%、転居した者のうち勤務地が希望地以外だった者は2.5%となっている。
  • 暫定再任用の評価について、「満足」と「ほぼ満足」と答えた者の割合は、「勤務地」が 85.6%、「知識・経験の活用」が 69.2%、「勤務形態・勤務時間」が 67.7%、「仕事内容」が 65.0%と高い割合となっているが、「ポスト・格付け」が 46.7%、「休暇」が44.3%と、共に5割を割り、「給与」については 17.2%と2割を割っている。
  • 暫定再任用という働き方の課題や問題点(複数回答)として、「給与の面での処遇が十分でない」が 71.5%と最も多く、次いで「期待されている役割が曖昧で、戸惑うことがある」と回答した者が 37.6%で、特に短時間勤務では 44.7%となっている。その他の項目では、「求められる仕事の質や量が厳しい」、「役職が下がり、モチベーションの維持が難しい」、「後輩や若い世代との人間関係が難しい」が 20%前後となっている。
  • 暫定再任用を希望しなかった理由(複数回答)は、「職場内でかつての部下や同僚に気を遣わせたくない」が最も多く 43.2%、次いで「新しい仕事に挑戦したい」が 42.6%、「給与・勤務時間等の勤務条件が希望と合致しない」が 33.3%となっている。

平均収入月額は 37.0 万円、赤字に苦しむ世帯は4割を超える

  • 世帯の構成は、「本人及び配偶者のみ世帯」が 38.7%(前回 35.9%)で最も多く、次いで「二世代世帯(子と同居)」が 34.1%(前回 36.2%)、「二世代世帯(親と同居)」が 8.0%(前回 9.6%)、「単身世帯」が 10.9%(前回 9.5%)となっている。
  • 世帯の収入(ボーナス収入を含まない。)及び支出の状況は、平均収入月額は 37.0 万円(前回 37.7 万円)、平均支出月額は 34.9 万円(前回 37.6 万円)と収入が支出を 2.1万円上回っている。非就労者の世帯では支出が収入を 9.8 万円上回っている。
  • 世帯の平均収入月額 37.0 万円の内訳の割合は、「本人の給与・事業収入」が 65.7%(前回 66.3%)で最も多く、前回調査と同じ傾向となっている。
  • 世帯の平均支出月額の内訳は、「食料」が 21.2%(前回 19.7%)と最も多く、次いで「税金」が 12.6%(前回 13.6%)、「社会保険料」が 12.4%(前回 12.1%)、住居(家賃・ローン返済額を含む。)が 11.0%(前回 10.5%)となっており、前回調査と同じ傾向となっている。
  • 住居の種類は、ローン返済中の持ち家に居住している者は 24.3%(前回 21.7%)であり、ローン返済済み又は返済なしの者を含めて持ち家に居住している者は 80.9%(前回83.0%)となっている。
  • 世帯の家計の状況は、「ゆとりはないが、赤字でもない」が 38.8%(前回 39.8%)で最も多い。また、「毎月のやりくりに苦労しており、時々赤字が出る」(23.3%)と「どうやりくりしても、常に赤字が出て生活が苦しい」(18.2%)を合わせると 41.5%となっている。
  • 家計がマイナスとなる場合の対処方法(複数回答)は、「退職手当を取り崩す」が 70.5%(前回 71.9%)で最も多く、次いで「退職手当以外の預貯金等を取り崩す」が 61.1%(前回 60.3%)となっている。また、「節約を徹底する」は 42.8%(前回 39.5%)となっており、3ポイントほど増加しているが、全体として前回調査と同じ傾向となっている。
  • 退職手当の使用予定(使用用途)(複数回答)は、「将来やいざという時の備え」が77.8%で最も多い。次いで、就労者では「住宅・土地の取得、住宅の増・改築」が多いのに対し、非就労者では「日常生活費への充当」となっている。

 

令和5年退職公務員生活状況調査の調査結果についてhttps://www.jinji.go.jp/kouho_houdo/kisya/2403/page_00055.html