【優秀博士論文賞】「優秀博士論文賞」受賞によせて(鳥山亜由美)

鳥山亜由美(法政大学大学院公共政策研究科兼任講師/東洋学園大学職員)

自治体が公立大学を地域活性化の中核としていかに位置づけ活用しようとしているのか

このたび、地域活性学会より「優秀博士論文賞」という栄誉ある賞を賜り、心より御礼申し上げます。本賞の創設後、第一号の受賞者として選定いただいたことは、喜びもひとしおです。拙論「『公立大学化』の政策過程―公私協力大学を事例に―」は、自治体が私立大学を公立化する政策過程を文献調査に基づき分析したものです。単なる「私立大学の救済」という視点では捉えきれない自治体の政策的意図に着目し、①意思決定の要因と過程、②公立化大学の設計に込められた政策意図、③公立大学化後の活動の実際、という三つの観点から分析を行いました。本論文では、「市が単独で」「公私協力大学」「政策過程」という三つのキーワードを組み合わせ、自治体が公立大学を地域活性化の中核としていかに位置づけ、活用しようとしているのかを明らかにすることを目的としました。政策段階モデルおよび政策の窓モデルを用いて、政策問題の発見から意思決定、実施・評価に至るまでの一連のプロセスを整理し、市政に沿って大学の存在が再定義される「リフレーミング」についても述べました。

高知工科大学に勤務していた経験が契機

本テーマに取り組む契機となったのは、公立大学化の初事例となった高知工科大学に勤務していた経験です。制度の変化が大学運営や地域との関係性に及ぼす影響を現場で実感する中で、政策研究として追究したいという思いが芽生えました。そして、その後の公立大学協会、新設の公立大学である三条市立大学での勤務を通じ、公立大学が地域に果たす役割を考え続けていた日々から「私立大学の公立大学化」を博士論文のテーマにしようと決意しました。研究を進めるにあたり、指導教員である廣瀬克哉先生のご指導、ならびに廣瀬ゼミの皆様のご助言とご支援に深く感謝申し上げます。皆様のご協力なくして、本論文の完成はあり得ませんでした。本論文により、2023年9月に博士(公共政策学)の学位を授与されました。今回の受賞を励みに、今後も大学政策と地域社会との関係性について、実証的かつ政策的意義のある研究を継続してまいりたいと考えております。なお、私は現在、都内の私立大学にて職員として勤務しております。本研究で得た知見を、産官学民等など連携による地域社会活性化のヒントとして活かしながら、実務の現場においても一層励んでまいりたい所存です。末筆ながら、地域活性学会の皆様に改めて深謝申し上げますとともに、本研究が地域と大学のより良い関係構築の一助となれば幸甚に存じます。