久保田章市研究大会実行委員会副委員長、地域活性学会副会長、浜田市長
島根県から生まれた「過疎法」(久保田章市)
研究大会テーマに「過疎地域」を取り上げた理由は、全国の自治体の「51.5%」が過疎自治体であること、島根県の19市町村は「全て過疎自治体」であること、これまで研究大会のテーマに「過疎」が取り上げられたことがないことによります。過疎地域とは地域の人口が減り、その地域で暮らす人の生活水準や生産機能の維持が困難な状態にある地域のことです。昭和30年代以降、日本は高度成長期にあり、農山漁村地域から都市地域に向けて若者中心に大規模な人口移動が起こりました。その結果、特に大都市地域では人口集中による「過密」問題が起こり、その一方、農山漁村地域では「過疎」状態が発生しました(全国過疎地域連盟「『過疎』のお話し)。1969年9月に島根県松江市で、佐藤栄作内閣総理大臣(当時)が出席して「1日内閣」が開催されました。参加した匹見町(現益田市)の大谷市長(当時)が、過疎地域の窮状と過疎対策を訴えました。その後、国会議員や中央省庁職員が相次いで匹見町を視察に訪れ、マスコミにも取り上げられました。これがきっかけとなり、1970年に議員立法によって「過疎法」が制定されました。期間10年の時限立法でありその後も10年ごとに制定されています。

地域活性学会の研究大会テーマ
回 | 年 | 開催校・地域 | 会場 | テーマ |
1 | 2009 | 法政大学 | 東京地 | なし |
2 | 2010 | 小樽商科大学 | 小樽市 | 地域活性と人財育成 |
3 | 2011 | 獨協大学 | 草加市 | 地域再生の道―3.11大震災後の地域づくり |
4 | 2012 | 高知工科大学 | 高知市 | 逆転の発想~地域活性の新たな価値をどう創るか |
5 | 2013 | 高崎経済大学 | 高崎市 | いま、あらためて問う、地域と大学の連携 |
6 | 2014 | 東農大オホーツク | 網走市 | 地域農業の6次産業化と地域経済の活性化 |
7 | 2015 | 大手前大学 | 西宮市 | 健康・文化・スポーツと地方創生 |
8 | 2016 | 小布施町 | 小布施町 | 小さなまちの挑戦~地方創生とまちづくり |
9 | 2017 | 浜田市 | 浜田市 | 課題先進地における地方創生の挑戦 |
10 | 2018 | 拓殖大学 | 東京都 | 地球時代の地域活性~世界の中の地域、地域の中の世界 |
11 | 2019 | 大村市 | 大村市 | 大村湾を中心とした地域連携~多様性と国際性 |
12 | 2020 | オンライン | 地域活性の新しい形~空間を超えた都市と地域の共生 | |
13 | 2021 | 金沢星稜大学 | オンライン | 地域活性とAuthenticcity~過去・現在そして未来へ |
14 | 2022 | 関東学院大学 | 横浜市 | 実践と研究で拓く地域活性学の地平 |
15 | 2023 | 但馬信金 | 豊岡市 | 小さな世界都市豊岡の挑戦 ローカルとグローカル 環境と経済 |
16 | 2024 | 名古屋市立大学 | 名古屋市 | 挑戦のエコシステム |
17 | 2025 | 島根県立大学 | 浜田市 |
過疎という現象が認知され始めてから60年(保井俊之)


西谷村は、三八豪雪、伊勢湾台風、その後追って甚大な豪雨被害に見舞われ、離村者が後を絶たなかった(今村智子)
福井県大野市には廃村になった西谷村という地方自治体があります。西谷村は、三八豪雪、伊勢湾台風、その後追って甚大な豪雨被害に見舞われ、離村者が後を絶たなかったようです。1965年9月1日の西谷村広報に「離村者が後を絶たないことについての記事」がでたと西谷村史 上巻 P.706にあります。また、西谷村史上巻には続けて、「過疎という言葉は、経済審議会の地域部会が1966年に出した中間報告書に使われた」と記載されています。島根県と同時期に福井県でも過疎に悩んでいたようです。
