データからみた博士課程

博士課程入学者は1万5千人おり、そのうち社会人は6千人います。社会人を除く24歳人口で比べたら、大学院博士課程に行くのは24歳人口のたったの0.7%です。思い出してみれば、大学院に進学して勉強したいとは思わなかった。工業高校を卒業した私は、大学卒業時に既に職業教育は7年目であり、早く社会に出て働きたいという思いが強かったです。大学卒業後は就職せずに26歳でコンサルタント会社を起業しました。あれから40年、ずっと一人で働いてきました。でも66歳になった今、私、敢然と大学院に入り学びだしました。そろそろ自分がやってきた地域活性化の仕事をまとめたい。しかし、博士課程大変だ。今日はデータからみた博士課程についてまとめます。

資料:大学院の現状を示す基本的なデータ、文部科学省中央教育審議会大学分科会大学院部会(第81回)H29.5.30

アメリカとの差は極めて大きい

フレキシキュリティーとは、国が会社の従業員の解雇をしやすくする制度へ規制緩和し、従業員に対しては国が学び直しを保証する制度のことです。サントリー新浪剛史社長が「45歳定年制」を提唱して問題になったけど、賃金が安く、精力的に働ける年齢までしか企業は面倒見ないというのは、日本のグローバル競争力を考えた場合、会社としては当然の発想です。アメリカは解雇される前に従業員自らが学び直し、起業しているのでしょ。つまりアメリカの従業員は会社を安住の地と考えていない。単なるキャリアパス。大学で学び、社会に出て問題意識を得て、自分自身の意思で大学院に入り直し、研究する。また、その成果をもとに実践する。まさにJK。博士課程は大学の教員になることが目的じゃなくて、自分のこれからを突き詰めるところなんでしょうね。この差は極めて大きいですね。

中国との差も極めて大きい

世界の論文数の推移をみると中国が急上昇中です。論文数が減少しているのは日本だけです。論文数という数量の差に驚くべきではないですが、論文数を人口に見立てれば、中国の論文数は人口が集中する大都市であり、日本の論文数は過疎地域です。この差も極めて大きいです。過疎地域だとすれば日本の研究は、消滅危惧に直面しており、これからどうやって生き残るのかを考える必要があります。JKの博士課程進学を声高に叫ぶ必要があります。

博士課程入学者の4割はJK

学校基本調査によると、博士課程入学者に占める社会人割合は2000年の14.6%から2019年には42.3%とおよそ3倍に増加し、全入学者の4割を占めるまでになっています。JKって増えているのですね。

JKの多くが保健分野の学生

社会人向け教育プログラムがある大学の割合は25%にとどまると新聞が伝えています。教員不足やプログラムの安定した需要が見込みにくいといった理由なのだそうです。大学院生の多くが保健分野の学生です。地域活性学とはどの学問分野に属するのでしょうか。教育、保健、農学、工学、理学、社会科学、人文科学のすべての領域に入ります。しかし地域に根差した地域活性学はないですね。横断的に学生と一緒に考えられる教員もそんなに多くないのではないでしょうか。そこはJKがやってほしい領域です。

JKが博士課程に入学するのなら公立大学が穴場

ではJKが博士課程のどこに入学すべきかと言えば、公立大学院が穴場だということは、数字を見れば明らかです。私は高知工科大学大学院博士課程に入学させていただきました。有名私立大学大学院は年間300万円と聞きました。100万円の国の補助金があり、実質200万円とのことですが、私の学費の4倍です。都内23区にある大学院の先生は、自分の研究の延長線上でしか大学院生を取らないと聞きました。自分のまとめたいテーマがあるのでしたら、それに応じてくれる先生は地方の公立大学院にいるんじゃないかなあ。このマッチングはとても大切と思います。

博士課程に行かなくても論文書けるのではないか。

私は高知工科大学博士課程後期に入学し那須先生の博士論文の個人指導をオンラインで受けています。斉藤は論文の最終段階に入り3か月間は苦戦しました。行き詰りフリーズしていました。つくづく出来が悪い学生と思います。でもこの3か月無駄じゃなかった。地域活性学の斉藤理論の構築が進んでいます。博士課程に行かなくても書けたのではないかという質問に答えるのであれば、斉藤理論は一人ではたどり着けなかった。那須先生にたくさんのことを教えていただきました。ここだ、この関係を書くのよ。どうしてなのかを書くのよ。やっと見えてきました。斉藤はやっと博士論文を書く入り口にたどり着いたのだと思います。斉藤理論、楽しみにしていてね。

左:那須先生(地域活性学会副会長)、右:筆者

Writer : 斉藤俊幸(地域活性学会員)