フツーの市役所職員が大学院生になる~私がJKになるまで~

市役所職員がどうして金沢大学の博士課程に入ったのかを語ります。今村智子の2話目。

現場が大好き、いい考えは外で生まれる

私はごく普通の市役所職員。市役所職員は、人と直接会える、直接話ができるのが魅力。実際、皆さんが市役所職員と会うと、行政や政治へのお小言がぶぁ~と吹き出す。身に覚えはありませんか?私たち公務員も分かっています、あなたの思っていること、痛いほど分かります。しかし、不満は胸にしまって、自分に与えられた任務をこなします。自分ができることで、市のために、市民のために、目の前のあなたのために、何かしてあげたいのです。いろいろなスタイルの公務員がいますが、私は現場主義。見たり聞いたりしたことを、制度を使い形にするタイプ。逆に、国や県、前例、先進地の情報を集め形にするタイプもいます。こちらの方が多いかな?私は、これまで多くの地域づくり活動をしている団体と接し、一緒に悩んで、解決して、笑って、という感動を味わってきました。地域づくり活動では、活動を通し徐々に協力体制が出来上がり、個々の能力が共有されていき、いろいろなことが自分たちで解決できるようになっていきます。そのような団体の中で話していると、ほんわかと温かい気持ちになり、まるで親心のような嬉しさがこみ上げてきます。私は、異動しても、団体との縁は切れず、私が悩むと意見を聞きに行きます。

山奥から世界を相手にした地方創生事業をする?!

大野市ではほとんどの家で、家庭用ポンプで地下水を汲み上げ、そのまま飲用、生活用水として使用しています。簡単に言うと、蛇口からおいしいミネラルウォーターが出て、お風呂もトイレも洗車もできて、水はタダ。大野市は名水のまちです。しかし、高度経済成長期に地下水を汲み上げすぎ、井戸枯れを経験しており、地下水を守る取組みを45年以上官民協働で継続しています。

water and timor studests

大野市にて 湧き水と東ティモールの専門学校生

大野市もそうですが、多くの自治体では人口減少・少子高齢化という課題があります。政府と内閣府は協力し、市町村へ人材を派遣する制度を創りました。平成29年、初めて国から大野市に副市長が招かれました。副市長は、地下水保全活動をすばらしいと感じ、「この価値は世界へ発信できます」と、壮大なプロジェクトを組みました。私もプロジェクトの一員になり、海外関係を担当しました。英語で仕事をし、市外、海外の人と協力し、必死でしたがとても楽しかった。東ティモールというアジアの水環境が悪い後進国に、ユニセフを通じ給水施設を整備する事業で、私は世界を見ました。東ティモールの官公庁へ訪問し次なる事業展開の提案をした際、会議後少し会話をしたのですが、相手の公務員は修士以上や留学経験者ばかり。一方、私は学士。東ティモールから若手公務員をJICAの研修事業で受け入れた際の夕食時の会話は、世界の中の自国の立ち位置。英語しか話せない私のために、ポルトガル語から英語に切り替えてくれました。私の心の中で、修士がほしいと思い始めました。2年後、副市長は国へ帰り、次々にプロジェクトのメンバーは異動でいなくなり、市長も変わり、私一人でプロジェクトをひっぱることに。仕事はフランス、ベナン等に拡大し、各国の相手は修士を複数持つ人、博士号を2つ持ちハーバード大学を出た人もいて、私の学士コンプレックスは大きくなるばかり。

world water forum in Brazil

世界水フォーラム in ブラジルへ参加

久しぶりに大野へ寄ってくれた元副市長にポロっと出た一言が、「私も修士がほしいです。。。」。
「??誰かに相談しましたか?」
「いいえ。」
「私の知り合いが金沢大学にいますが、よろしかったら相談してみますか?」
「はい。」
そして、次の土曜、年度末で残業していた私に、「今なら時間が取れます。Zoomに入ってください。」と突然メールが届き、心の準備をするどころか、すっぴんのまま面談に入ってしまい、あとは流れにまかせ博士後期課程を受験しました。
JKにはこんな人もいます。

次は、~愛する大野市に退職届を出す~です
Write : 今村智子(地域活性学会員)