新たな時代に向けて…地域の誇りづくり

渡辺大介

新たな資本主義へ

「新たな資本主義」に向かって、社会が動き出しています。これは、今の社会のひずみを直し、当たり前の社会にしようというものだと考えられます。貨幣価値を最上の価値基準として捉えてきた弊害が、見直されるように感じます。一部に集中しすぎている「富の再分配」ということにもつながる大きな変革です。このような動きは、自分たちの生活の外側にあるものではありません。何が変わっていくのか、何が変わらないのか、自分にも良く分かりませんが、今の社会が「血の通った社会」に戻るようなことだと期待しています。以前にソーシャルビジネスと呼ばれる枠組みを作ろうとされていました。とても違和感があり、ソーシャル(社会)に影響しないビジネスがあるのかと逆説的に考えていた時期がありました。社会から必要とされていないビジネスが成り立つのか。それはあり得ません。「CSR」という言葉もありました。企業の社会貢献活動です。表面だけを感じ取った企業は「ごみ拾い活動」などを行いました。これでいいのでしょうか。「企業は社会に貢献するもの」それは、古くから当たり前のことでした。「世のため、人のため」に企業活動もあるはずです。例えば、石鹸を作る会社は、社会の公衆衛生環境の向上につながっています。単に石鹸を売って利益を得るための活動ではないはずです。最近は、SDGsという枠組みを作り出しています。限りある地球環境を守り、持続可能な社会を実現させる。これも当たり前のことです。私たち人間が生活する中で、地球環境を壊してしまえば、生きることができません。

こういった当たり前のことを見失ってしまっているのが、今の社会なのかもしれません。問題が発生すると自分のことは省みずに、別の何か(誰か)の責任にしてしまう。どこかで「評論家的思想」に陥っているのではないでしょうか。田舎は素晴らしい、地域活性化をするべきだ、磨けば光る宝がたくさん埋まっている…。評論家的発想では、地域活性化は望めません。その地域にある「資本」をまずは知ることから始めるべきです。そして、そこに誇りを持つ住民を増やしていく。ロバート・パットナムの社会関係資本という考え方がありました。本当の意味で「資本」をどう捉えるのか、その価値を貨幣経済ではない指標で評価し、その資本を新たな資本として価値が認められる社会が来ることで、本当の意味での地域活性化が実現するのだと思います。

これでいいのかふるさと納税

ふるさと納税制度があります。得する通信販売のように利用されている状況には、目を覆いたくなります。本来であれば、地域の信頼と評判に応じて、税収を再分配するためのものです。その地域が、どれだけ住民のため、社会のために「地に足の着いた信頼できる行政活動」をしているかが評価されるべきものであるべきです。地域の評価されるべき価値を強引に貨幣価値の指標で整理することで、ふるさと納税制度も間違った取り組みになってしまっています。資本を貨幣と同じもののようにしてしまっている社会の判断が、歪曲した社会を生み出しているのかもしれません。

まちづくりは誇りづくり

新型コロナウイルス感染症により、社会習慣の変革が求められています。DXにより近未来には、これまで以上に合理化された社会になっていくことでしょう。変わらないものとして人間の感情があります。感動を数値化することはできません。そこに、これからの地域活性化の進むべき道があるように感じます。上から目線の地域の評価ではなく、地域にある資本を価値として捉え、AIでは導き出せない貨幣とは別の価値を生み出し、それが評価される社会がすぐ近くまで来ているように感じます。新型コロナウイルス感染症により、リモートワークが増え、飲み会などの人と人が出会う機会も薄くなっています。貨幣経済で考えると影響は少ないのかもしれませんが、人と人の関係性を生み出す機会が少なくなり、信頼関係を作る機会が少なくなっているように感じます。仕事が効率化されたことで、感動が生まれる機会が少なくなっているようにも感じます。その中でどうやって共感や感動を生み出していくのか。とても難しい問題かもしれませんが、少しずつ紐解かれていくと思います。

私は小さな町の役場職員です。

できることは小さいですが、住民のため地域のために、誇りを持ち取り組んでいきます。21世紀を待っていた子供の頃のようなワクワクした気持ちを持ち、「まちづくりは誇りづくり」の信念を貫いていきたいと思います。

Writer :渡辺大介(地域活性学会員)

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