行政の前例踏襲主義と横並び主義を打破しないと乗り切れない

寺本英仁

邑南町のA級グルメでNHKプロフェッショナル仕事の流儀に出演し、一躍有名となった地方公務員の寺本英仁さんが50歳にして役場を退職した。今、職業は流動化しています。なぜ、役所を辞めたのかをお聞きしました(斉藤)。

にっぽんの田舎を元気にする

2022年3月31日邑南町役場を退職した。そして、4月1日自らが起業をし、株式会社ローカルガバナンスを立ち上げた。起業理念は「にっぽんの田舎を元気にする」である。コロナ禍の2年間、役場で課長職を務め感じたことは、行政の前例踏襲主義と横並び主義を打破しないと、アフターコロナは乗り切れないのではないか。ならば、一旦役場職員を離れて、外から応援していくのも方法ではないかと考えた。

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キーパーソンは地方公務員

ここ数年、行政改革による職員数の削減と300近くの権限移譲を考えると、10年前と比較して、職員の業務量は数倍にも増えている。そして、追い打ちをかけるコロナ対策。職員に「元気を出せ」と首長や議会、住民が言ってもなかなか上手くいくものではない。首長は、4年の任期と選挙があるがため、その期間で成果を出すために即効性のある政策に傾きかけるが、職員は町の10年、20年後を見据えてじっくり仕事ができるのも醍醐味である。だからこそ「にっぽんの田舎を元気にする」キーパーソンは地方公務員なのである。この公務員が目先の業務に追われるだけでなく、町の将来を見据えて仕事を遂行していくためには、まずは町の政策の決断をする首長と政策共有することが一番大事だと思うが、この部分が多くの自治体で欠けているのではないかと感じることがある。私の大好きな野球で例えるなら、首長は監督、コーチは管理職、そして選手は職員とするなら、監督の戦術を理解しないで試合をしても勝てるわけがない。

定年より10年早く役場職員を退職した

私は、定年より10年早く役場職員を退職した。しかしその分、役場の組織を知りつくしている。大学の先生やシンクタンクでは解決することができない自治体独自の悩みを聞き、首長と管理職、職員の政策共有のパイオニアになれるのではないかと思っている。4月から北海道鹿部町と広島県北広島町のアドバイザーに就任した。業務は、鹿部町は職員の人材育成、そして北広島町は地域商社の立ち上げである。内容は違えど、職員の能力を引き上げるお手伝いをすることには変わりはない。自治体職員に一番必要な能力は何か改めて考えてみると、答えは「そこに住んでいる人の暮らしを守ること」だと思う。ならば、個人プレーでは絶対に守ることはできない。組織として、戦術共有をして戦えるチームを作らないといけない。残り10年あった役場職員人生を無駄にすることなく、私自身も効率的に多くの自治体に関わり、戦略的に「にっぽんの田舎を元気に」していきたい。

北海道鹿部町と広島県北広島町のアドバイザーに就任

Writer:寺本英仁