【盛山大臣肝いり】博士人材活躍プランを読む

盛山大臣は2つの博士号をもっている

2023年11月30日に盛山大臣を座長とする「博士人材の社会における活躍促進に向けたタスクフォース(TF)」の第1回会議が開催されました。日本における博士課程への入学者は減少傾向にあり、他国に比べて博士号取得率が低い状況にあります。その背景には、経済的負担や、国内における博士号取得のメリット、博士人材のキャリアパスの不透明さなどがあげられます。博士人材の能力が社会において正当に評価されるとともに、博士人材の強み・魅力を可視化し、アカデミアのみならず、社会の多様なフィールドで一層活躍することを後押ししていくために、盛山大臣の下にTFを設置し、取り組むべき施策等について集中的に検討しています。盛山大臣は、大学への訪問、大学院生や大学関係者との意見交換、産業界との意見交換などを通じて議論を重ねた上で、来年の春頃を目途に、博士人材活躍促進に向けた施策パッケージの取りまとめを行うとし、「私の大学教員として勤務した経験や、大学院で2つの博士号を取得した経験も活かし、しっかりと実効性のある方策を打ち出していきたい。」と述べています。

博士人材活躍プラン(文部科学大臣メッセージ)

博士人材は、新たな知を創造し、社会にイノベーションをもたらすことができる重要な存在です。海外では社会の様々な分野で活躍しており、我が国においてもその重要性と期待は非常に高まっています。博士を目指したい方が安心して学修できる環境を整え、高い専門性と汎用的能力を有する人材として生き生きと活躍することを後押ししたい。この思いから、「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」を取りまとめました。文部科学省は博士を目指す学生を全力で応援していきます。

じっくりと腰を据えて、思う存分研究に打ち込んでください

学生の皆さん、文部科学省では、多くの博士課程学生が、より一層安心して研究に打ち込める環境を実現することを約束します。ぜひともじっくりと腰を据えて、思う存分研究に打ち込んでください。研究により得られる真理を深く探究する経験や、新たな価値を世界に問う経験は、将来様々なフィールドで活躍するための大きな力となります。大学関係者の皆さん、かつて博士人材は大学の研究者となることが有力な進路とされてきましたが、博士人材の高度な専門性や幅広い能力を多様な場で発揮できるよう、大学院教育の充実や進路の拡大に向けた支援など、大学院改革の取組を進めていただきますようお願いします。

博士が日本社会を変えるムーブメントを一緒に起こしていきましょう

産業界の皆さん、博士人材が多様な場で活躍していくことは社会の発展にとって極めて重要であり、採用拡大や処遇改善、従業員の博士号取得支援などの取組やご協力は欠かせません。積極的な取組を進めていただきますようお願いします。文部科学省も大学関係者・産業界の皆さんと共に取り組んでまいります。博士が日本社会を変えるムーブメントを一緒に起こしていきましょう。

意義・目的

博士人材は、深い専門知識と、課題発見・解決能力などの汎用的能力に基づき、新たな知を創造し、活用することで、社会の変革、学術の発展、国際的ネットワークの構築を主導し、社会全体の成長・発展をけん引することができる重要な存在です。欧米をはじめとするグローバルな社会では、博士人材の活躍の場は研究分野に限定されません。博士人材は、特定分野の専門性と幅広い能力を持つ者として信頼を得て、企業のトップなど様々なフィールドでリーダーとして活躍しています。一方、「博士=研究者」というイメージが一般的である我が国では、「博士号が専門分野にとどまらず複雑な課題への解決策を提示できる者に与えられる国際的な能力証明であり、社会の課題発見・解決に挑む際のスタートラインである」というグローバルスタンダードが、社会、大学及び学生に必ずしも十分に共有されていません。そのような中、我が国では人口当たりの博士号取得者数が他の先進国と比較して相対的に少なく、また、博士人材の社会の多様な場での活躍が進んでおらず、そのことが我が国の停滞を招いているとの声もあります。今後、社会がより高度化かつ複雑化する中、大学院教育において博士人材が必要な力を身に付けられるようにするとともに、社会全体で学生一人一人の自由な発想と挑戦を支え、博士の学位の価値を共有しながら、国内外の様々な場で活躍できる環境を構築することによって、博士人材の増加を図ることが必要です。

目指す姿

博士人材が、アカデミアのみならず、多様なフィールドで活躍する社会の実現

意欲と能力があればいつでも大学院に進学でき、質の高い教育を受けながら研究に打ち込める環境と、博士人材が社会から正当に評価され、アカデミアのみならず多様なフィールドに挑戦し、一層活躍できる環境を構築します。これにより、博士を目指す人を増やすとともに、多くの優秀な博士人材を輩出し、博士人材一人一人の実りある生涯の実現と社会全体の持続的な発展を目指します。

解決すべき課題

  • 主要国の中では、日本のみ、人口100万人当たりの博士号取得者数の減少傾向が続いている。
  • 博士課程への入学者は減少傾向。特に修士課程から直接進学する学生数は2003年から約4割減少。
  • 学生の声として「博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない」「博士課程に進学すると修了後の就職が心配である」との回答が3割を上回っている。
  • 産業界では、産学連携や課題解決型の教育へのニーズが高く、大学院教育のカリキュラムと産業界の期待との間にギャップがある。
  • 人文科学・社会科学系修了者の約6割、理学・工学・農学系修了者の約2割が標準修業年限を2年以上超過している。特に人文科学・社会科学系において標準修業年限内の円滑な学位授与が進んでいない。

取組の方針

文部科学省において、以下のとおり取り組みます。

◆ 産業界等と連携し、博士人材の幅広いキャリアパス開拓を推進

◆ 教育の質保証や国際化の推進などにより大学院教育を充実

◆ 博士課程学生が安心して研究に打ち込める環境を実現

◆ 初等中等教育から高等教育段階まで、博士課程進学へのモチベーションを高める取組を切れ目なく実施