【地域活性学】まさに今から少子化問題が牙をむきだす

日本は移民政策を選択できないのではないか

国立社会保障・人口問題研究所は、「日本の将来推計人口(令和5年推計)」を発表した。30年後の2056年には人口が1億人を割るとの推計です。50年後には総人口は現在の7割の8700万人に減少し、そのうち65歳以上の人口がおよそ4 割を占めます。高齢化社会は50年後になっても終わっていません。平均寿命が延び、外国人の入国超過増により人口減少の進行はわずかに緩和するとの見通しです。人口推計は、日本人と外国人とに分け、日本人だけでの推計で人口減少が危機的な状況であることを示し、外国人流入という政策転換の必要性を指摘していると読めます。しかし外国人に関する前提条件がよくわかりません。入国超過率、外国人の入国超過数、外国人の国籍異動等の条件を明記していますが、その数値が妥当なのかはすぐには判断できません。新聞によると50年後の2070年には総人口の1割以上が外国人となるとの想定らしいです。外国からの移民がいないと国力が維持できない日本の状況を調査者は無言で問題提起しています。しかし、優秀な外国人が大都市で高賃金で雇われ、日本人が低賃金であるとアメリカのホワイトプアーが巻き起こした政治的混乱や英国のEU離脱と同じような格差問題が日本でも起きます。移民問題はその引金となるのではないでしょうか。一方、地方でも、特定の国の人たちが移民として、あるいは異教徒として大挙流入し教会やモスクを建立するとなると、日本のムラ社会はそれを許さないのではないでしょうか。大都市でも地方でも外国人の受入れを拒絶する日本人の反対の声が大きくなり、結局政府は外国人の移民政策を選択できないのではないでしょうか。移民を受け入れずとも外国からの人材獲得競争が一段と激しくなるとも新聞は書いていますが、全国の地方自治体が今直面している人口誘致合戦を、今後50年間もグローバル社会の中で続けるのでしょうか。日本は世界的な人材獲得競争にやがて疲弊するのではないでしょうか。買い負けるのではないでしょうか。人口の急降下曲線を眺めて、心配ばかり募ります。

日本の将来推計人口(令和5年推計) https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp

農地や水源地は企業や海外ファンドによって売買されるのではないか

一方、企業が農地取得できる法律案が、参院本会議で成立しました。農家の後継者不足や耕作放棄地の拡大に憂慮しての企業の登場です。法律案では、地方自治体を通じた申請を行うことになっており、企業などの参入によって農地の再生や有効活用につなげる計画です。今まで、兵庫県養父市の国家戦略特区だけであったものを全国に横展開するのですね。もし企業が行き詰れば、地域が持つ資産は負債となり、簡単に分解され、個別に売り買いされる懸念があります。これをすべて地方自治体が買い取れと言われても手が出ないのでは?しかも、農地も水源地も日本企業という名のもとに海外ファンドによって購入される可能性もあるのではないでしょうか。地域の土地利用維持を支えるイノベーションまでもが、外国資金が頼りで、その事業の下で、日本人が汗を流して働いた収益が外国の投資家に流れてしまうのであれは日本の農地は植民地になり下がったと言わざるを得ません。植民地とならないためには、土地利用維持に必要なイノベーション投資は、国が責任を持って関与することがよいと思います。でもその投資先は株式会社のような民間企業ではなく、地域に鎮座して資産の分解や流通ができない新たな法人制度が必要なのではないかと思います。

まさに今から少子化問題が牙をむきだす

格差社会に歯止めをかけられない日本、外国からのおカネを受け入れ、農地から生まれた価値を海外に流出させる日本はどこかで破たんします。言い換えると日本は人口減少を前提にした新たな地域活性化政策を考える必要があります。それは社会変革をともなうものとなります。選択と集中という成長戦略や地域間競争という新自由主義的な政策は限界に近づいています。SDGs等の地球規模の要請を踏まえた、社会的価値の創造を生む地域や農地を作らなければならなりません。敢えて言えば、日本は日本の農地で社会的価値を創造できるマイノリティの民でよいと思うのです。そこに必要な社会変革とは社会的価値の創造に対する揺るぎない自信です。まさに今から少子化問題が牙をむきだす。地域活性学の研究者は、まさに今から知恵を絞り、日本人が持つ存在価値のあり方を指し示してほしいと思うのです。

Writer:斉藤俊幸