進学者半減時代の高等教育、進む学校再編

大和田順子さんに進学者半減時代の高等教育、進む学校再編の寄稿をいただきました(斉藤)。

3月9日に、「学校再編を通じた経営革新」をテーマとしたフォーラムが、「OCC教育テック総合研究所」(大阪市阿倍野区)主催にて開催され、参加しましたので報告いたします。登壇者は同研究所所長、文部科学省高等教育企画官、高等教育法人経営層、公認会計士などでした。参加者は会場、オンライン併せて約160名と関心の高さがうかがわれました。背景としては、急速な少子化が進行する中で、大学・短大等の高等教育機関の再編・経営革新が重要な課題となっています。昨年9月には文部科学大臣より中央教育審議会へ「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」が諮問なされました。

2040年には半減以下に

高等教育を取り巻く環境は大きく変化しています。まず進学者数です。18歳人口が2022年の約112万人から、今後の大学進学率の伸びを加味しても、2040年の大学入学者数は約51万人に、さらには2050年までの10年間は50万人前後、つまり半減することが予測されています。次にICTの浸透です。コロナ禍を契機として遠隔教育が急速に普及しました。GIGAスクール構想による1人1台端末等のICT 環境の整備の進展や、高等学校での「総合的な探究の時間」等における問題発見・課題解決的な学習活動の充実なども進展しています。諮問では2040年以降の社会を見据えて、目指すべき高等教育の姿やそれを実現するための方策などの高等教育の在り方について、4つの事項が取り上げられています。第一は、2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿。第二に、今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた、地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方。第三に、国公私の設置者別等の役割分担の在り方。第四に、高等教育の改革を支える支援方策の在り方についてです。

 

厳しい経営に直面している地方の学校法人

フォーラムでは、まず今年1月に全国672の学校法人を対象に行った調査結果が紹介されました。118法人から回答がありました。全体の約8割が今後の経営見通しは厳しい(やや厳しいを含む)と回答しており、学校の種類別では短大の63%(四大制では27%)が、立地別では地方の法人の38%(三大都市圏では27%)が「厳しい状況」と回答しています。地方の短大の経営が厳しいことが明らかです。地方にある中小規模の私立大学は、地域社会の維持に不可欠な専門人材の輩出を、短期大学は、地方の進学機会の確保に重要な役割を果たすとともに、教育・保育、看護、介護等の多様な人材養成機能を担っています。

高大連携、外国人・リカレント教育

実際に学校法人内で取り組んでいる施策で効果をあげているものとして「広大の連携強化」「ターゲット学生の変更(外国人・リカレント教育)」が挙げられています。一方、昨年話題になりましたが、徳島県神山町に開講した「神山まるごと高等専門学校」のような新しいタイプの学校は新たな可能性を提示しています。民間の資金を財源にし、「テクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学ぶ」をコンセプトとした教育が注目を集めています。全寮制で1学年40名、学生も全国から集まり、アントレプレナーの育成が始まっています。

神山まるごと高等専門学校https://kamiyama.ac.jp/

フォーラムでは、まず今年1月に全国672の学校法人を対象に行った調査結果が紹介されました。118法人から回答がありました。全体の約8割が今後の経営見通しは厳しい(やや厳しいを含む)と回答しており、学校の種類別では短大の63%(四大制では27%)が、立地別では地方の法人の38%(三大都市圏では27%)が「厳しい状況」と回答しています。地方の短大の経営が厳しいことが明らかです。地方にある中小規模の私立大学は、地域社会の維持に不可欠な専門人材の輩出を、短期大学は、地方の進学機会の確保に重要な役割を果たすとともに、教育・保育、看護、介護等の多様な人材養成機能を担っています。

教育のICT活用&学校経営を学ぶ大学院

これらの課題に対する対応として約半数の学校法人が将来予測の実施や経営改善のためのプロジェクトを発足していますが、外部の専門家への相談は25%未満にとどまっています。多くの法人で再編に対するアドバイザーが求められており、中期経営計画の立案やマッチングなどへのニーズも高いとのことです。なお、本フォーラムを主催したOCC教育テック総合研究所は、大阪キリスト教短期大学附属の研究機関です。同短大は、110年にわたり、これまでの2万人以上の教育者養成実績や幼稚園・保育園運営を行ってきました。2022年度より経営体制が変わり、2023年度から短大に教育テックコースの新設や同研究所を設立。また、2025年度の開学を目指し、フルオンラインで学べる教育テック大学院大学の設置を準備中とのことです。地方でも、ICTやアクティブラーニングなどを取り入れ、地域ならではの魅力的な学びの場、出口としての働く場を作ることは、まだまだ大きな可能性があると言えそうです。

※ OCC教育テック総合研究所 https://www.occ.ac.jp/iite/

同研究所では2024年度には「Team Swimmy 大学経営研究会(仮称)」を発足させるそうです。大学連携・再編、国内&海外の大学連携・再編事例の共有・ディスカッション、補助金等も活用した、トライアル活動の企画・実施なども行うとのことです。スイミーは小さな魚が集団で泳ぐことで、大海を乗り切る、という絵本から命名しているそうです。