ゼミの地域活動をバーチャルカンパニーで出来ないか?

舛井 雄一(國學院大學北海道短期大学部学科長教授)

國學院大學北海道短期大学部で教員をしております。茨城県生まれで学生時代、会社員時代を東京で過ごしました。専門は会計学で、会社員時代には経営企画部だったので地域活性化とは無縁の生活でした。その後、縁があって北海道滝川市にある國學院大學北海道短期大学部で働く機会を得ました。

疲弊したまち、しかし住めば都

他のJKの皆さんとは異なり、全く地域との関わりもなかった私が地域と接点をもったきっかけは、北海道の疲弊したまちでした。引っ越しのため東京から北海道の大学の最寄り駅に降り立つとそこには絵に描いたようなシャッター街が・・・。この先ここで生活していくのか?と不安に思った記憶があります。しかし、住めば都とはよく言ったもので慣れてくると冬の豪雪を除けば住みやすいまちでした。

ゼミの地域活動をバーチャルカンパニーで出来ないか?

大学では会計学や経営学を教えています。当初、経営学を教えていても、有名な企業名を出せば反応する部分もあるものの、組織論に関しては全くピンと来ていない様子に困っていました。無理もありません。大学生はアルバイトぐらいはしているもののなかなか組織のイメージがわきにくいものです。何とかできないものかと思案しているときに、ゼミで経営学を勉強する傍らで、ゼミの地域活動をバーチャルカンパニー的な組織で出来ないか?と思い付き、とりあえずやってみることに。ベンチャー企業で働いていたのでとりあえずやってみて、ダメならやめようと結構軽い気持ちで始めてみました。

北海道滝川市江部乙地区で行っているハロウィン・商店街スタンプラリー

経営学の知見を応用し、課題を一つひとつ解決

実際に始めてみると、組織的な問題が次々と起きます・・・(笑)情報が共有されていない、学生間のモチベーションの差が大きい、ゼミ長のリーダーシップが欠けてる・・・などあげればきりがありません。しかも、短大なので一年経つと半分が入れ替わってまた一からやりなおし。地域活動は学生だけではなく、地域の皆さんと協働していくことになります。おしかりの電話をもらい謝罪に行くことも何度かありました。しかし、活動を始めてもう10年近くになりますが、学生たちと経営学の知見を応用し、課題を一つひとつ解決していきながら何とか形になってきたような気がします。地域からも少しずつ頼られる存在になってきました。

活動拠点のひとつ函館本線江部乙駅での雪かき作業

彼らは自信を深め、社会に対して前向きになってゆく

現在では、ゼミ内に3つのバーチャル事業部があり、3か所での活動をしています。本学の学生たちは東京圏の一都三県を出身とする学生が多いのですが(彼らの多くが卒業後に大学に3年次編入していきます)、彼らはこちらが感心してしまうほど主体的に真剣に取り組んでいます。当初は経営学を理解してもらう手段として地域活動を始めたのですが、今ではそれよりも学生が子供から大人たちまで多くの地域の皆さんとコミュニケーションをとりながら活動を行っていく中で彼らが自信を深めていき、社会に対して前向きになる効果を感じています。よく勉強するようになりますし、就職した後も非常に前向きに目標をもって働く学生が多いです。よく大学のパンフレットに書いてありますが、地域がキャンパス、地域の皆さんが先生。まさしく、「地域には人を変える力がある」ことを実感しています。また、地域にとっても大学生が共に協働する意義は大きいと感じています。これからも地域にも学生にも有益な活動ができるように研究を深めていきたいと考えていますので皆様のご指導やご助言をよろしくお願いいたします。

地域の商店の協力をいただいて開催する学生カフェ
地域資源の再発見に向けたまち歩きの様子