書名『役所のしくみ』
【はじめに】
世の中には、企業や団体など多くの組織があります。その組織は、どんなしくみで、どんな仕事をしているのか。外から見て、比較的すぐに分かる組織もあれば、よく分からない組織もあります。私たちにとって身近な存在なのに、よく分からない組織の一つが、市町村などの「地方の役所」ではないかと思います。皆さんは、次の疑問に答えることができるでしょうか?
- 市町村と都道府県の役割はどう違うのか?
- 都道府県は47あるが、いつ、そうなったのか?
- 市町村の「平成の大合併」は、なぜ行われたのか?
- 役所では「お役所仕事」だとか「前例主義」だと聞いたことがあるが、実際はどうか?
- 市町村長と市町村議会は、どのような役割を担っているのか?待遇はどうなのか?
- 市町村長や市町村議会議員はどのような活動をしているのか? 待遇はどうか?
実は私は、市長になる前、恥ずかしながらこのような疑問を持つこともなく、当然、その答えをほとんど知りませんでした。私は、大学を卒業して都市銀行に勤務し、50歳を過ぎて大学教授に転身しました(専門は中小企業経営)。そして、約12年前、大学教授を辞め、40年以上過ごした首都圏を離れて、生まれ育った浜田市(島根県)にUターン、市長選挙に立候補し、浜田市長になりました。よく、「政治家の家系ですか?」と聞かれますが、私の家系には親戚も含め政治家は一人もいません。縁あって市長になったものの、まさか自分が地方政治の世界に飛び込むとは思ってもいませんでした。世の中には、内側に入らないと分からないことが沢山あります。市長になった当初は、見るもの聞くもの、すべて初めてのことばかりでした。市役所という職場で働き始め、職員と共に政策や施策に取り組み、年に何回か開催される市議会に出席し、県庁や霞が関の官庁に出向いて相談し、話を聞く中で、「えっ、そうだったの?」と思うことがしばしばありました。本書は、「地方政治」や「地方の役所」について、私が市長になって知ったこと、体験したことを本にしたものです。本書を書き始めたのは約1年前からです。親しい人に、「今、本を書いています」と話すと、ほとんどの人から「忙しいのに、よく書けますね」と言われます。実は、数年前から、日々の活動の中で気づいたことや新たに知ったことを小型ノートに書き綴っていました。このノートを基に、本の構成を考え、参考になる文献や資料を読み、根拠法などを調べて、書き上げたのが本書です。本書は、地方政治や地方の役所について書いたものですが、正確を期すために、できる限り根拠法やデータを明示するように努めました。しかし、専門書ではありませんので、読者の皆さんに気軽に読んでもらえるように、できるだけ事例やエピソードを交えて書いたつもりです。本書は、いわば「地方自治の入門書」です。本書を読んでいただければ、地方政治や地方の役所について、おおよそのことは分かっていただけるものと思います。読んでいただきたいのは、現職の市町村長、地方議会議員、自治体職員はもとより、将来、地方政治での活躍を考えている人、地方公務員を目指している人、そして、地方自治に関心のある学生や、役所のしくみに興味のあるすべての皆さん方です。一人でも多くの人に本書を読んでいただき、地方政治や地方の役所に関心を持ち、読者の皆さんの中から、将来、地方のために活躍する人が増えれば嬉しく思います。
2025年3月
浜田市長 久保田章市
現役市長だから書ける地方自治体・市役所のしくみと仕事。 役所が楽って本当? 市長の議会との関係はどうなってるの? など興味深い話題満載

著者久保田章市(浜田市長)
出版社日本経済新聞出版社
発売日5月10日
価格990円(税込み)
目次
第1章役所勤めはつらいよ
第2章そうだったのか地方自治体
第3章首長と議会が2大プレーヤー
第4章地方自治体は常に財源不足
第5章役所が取り組む「施策」とは
第6章首長になる前に知っておきたいこと
久保田章市
浜田市長(3期目)、島根県立大学客員教授、地域活性学会副会長、1951年、島根県浜田市生まれ、東京大学卒業、法政大学大学院修士課程修了。横浜国立大学大学院博士課程単位取得満期退学。三和銀行・UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に30年間勤務し、、支店長・部室長等を歴任。三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員を経て、法政大学経営大学院教授。専門は中小企業経営、後継経営者育成、地域経営など。主な著書に『百年企業、生き残るヒント』『小さな会社の経営革新、7ルの成功法則』『二代目が潰す会社、伸ばす会社』などがある。