銀行から不動産会社へ転職し、博士に挑戦

今永典秀(右)

とにかく「量」、恥じることなく「挑戦」

1982年に名古屋で生まれ、大学まで過ごしました。名古屋大学経済学部卒業後、住友信託銀行で法人営業を7年ほど行い30歳で、地元の愛知県へUターン転職をしました。東和不動産ではマーケティングと経営企画(事業開発)の傍ら、学生と社会人のキャリアに関する座談会を行なっていたところ、岐阜大学の地域協学センターの次世代地域リーダー育成プログラム・産業リーダーコースで働くチャンスを得ました。岐阜大学で働きながら、同大学工学部の先生に博士論文の指導を頂いてました。 それ以前もサラリーマンとして働きながら、グロービス経営大学院に通い経営学を学び、人的ネットワークも構築できていました。これによって、大学の研究ではインターンシップの実践や企業研究の際にこのネットワークが有効に働き、横断的な領域での研究ができました。私は積極的に学会発表を行い、査読論文の投稿を行いました。これらにより博士論文は120ページを超えるものができました。

5年間で10学会に所属、学会発表50回、論文30本投稿

約5年間で10の学会に所属し、時間の許す限り発表や投稿を行いました。2022年3月時点で、数えてみると、学会発表は約50回、査読論文は約30本を投稿していました。発表や投稿の中で、研究者からの助言が蓄積され、博士論文の質を高めることができました。  時間も能力(経験)も足りなかった私ですが、指導教官から、「どうですかー?」「打ち合わせしませんか?」と声をかけてもらい、なんとか頑張れました。自分にとって最高の信頼・尊敬できる教官との縁と、「とにかくやり切る」という覚悟が大事だったと思います。 博士論文の中身は、出だしから終了間際まで大幅な改定の連続で、論文を書き終えた後も、やっとここからがはじまりなのだと感じています。今から6年前の話ですが、大学でのキャリア形成のための研究を行うことが必要なのだと感じ、職場で接点のあった先生にご指導いただき博士論文を書き終えた次第です。それまで全く研究したことがなかったのですが、とにかく「量」、恥じることなく「挑戦」を勝手に合言葉に、2021年3月に博士(工学)を取得することができました。

2021年3月 博士取得(恩師の岐阜大学工学研究科高木朗義教授)

論文作成の基本が理解できていなかった。~ここまでボロボロに言われたことはない、屈辱すぎる。できなすぎる自分に絶望!

工学部(土木・まちづくり・防災)が専門領域の高木朗義先生が、「実践」、オープン・ソーシャルイノベーションを重要視されており、「地域企業と若者によるイノベーションの場」という内容で博士論文を書きました。論文作成の基本が理解できていなかったため、指導教官の先生には、本当に丁寧に「こんなこともわからないのかー。基本なんだけど・・・」(と絶対に思っていたはずですが)根気強く、本当に丁寧にご指導いただきました。途中の審査では、今までの人生でここまでボロボロに言われたことはない、屈辱すぎる。できなすぎる自分に絶望!を感じましたが、一晩飲み、次の日には忘れられる、という「住友系の熱い魂」のおかげで、なんとか乗り越えることができました。博士論文を書き終えた後は(今思うと恥ずかしすぎる内容ばかりですが)、少しだけ悟りを開いた気がして、(全然わからない、学ばなければいけないことだらけ)、著書を発行する機会や講演セミナーで話す機会も増えました。

研究領域はインターンシップ

今は、名古屋産業大学で、2021年4月から開設された「経営専門職学科」(専門職大学)の学部の立ち上げの中心的な担当者として関与して、インターンシップをはじめとした実践教育を担っております。キャリアデザイン、共創・フューチャーセンター、地域連携論、統計調査実習、社会創造実習、インターンシップなどの科目と、大学院で「地域イノベーション論」を担当します。研究領域は、大学から携わった「インターンシップ」を中心に、自らのバックボーンが活かせる(銀行員の知見)「企業」側に着目した内容や、地域中小企業や地域のイノベーションなどが中心です。合わせて、異なるアクターが集まる「場」にも関心があり、フューチャーセンター、コミュニティマネージャー、コーディネーターの役割などにも関心を持っています。

日本初の経営専門職学科(大学から認可)の説明会の様子

大学のゼミ活動の様子

ゼミ生の卒業式の様子(一人おじさん・・・)

インターンシップは転換期

「実務家教員」として取り上げていただくことが最近増えました。自分の経験や能力を誰かのために役立てたいと思い、NPO法人の理事や企業のアドバイザーなども行っています。その中で、名古屋市のスタートアップ推進の場づくり、社会起業家の支援、まちづくりなどに自分なりに貢献しております。今後も「インターンシップ」の普及・発展に向けて頑張っていきたいと思っています。著書に「企業のためのインターンシップ実施マニュアル」(日本能率協会マネジメントセンター)があります。インターンシップは転換期にあると思っていますが、地域や地域中小企業に貢献するような実践型インターンシップ(Etic.G-netなどのチャレンジ・コミュニティーが実践するようなもの)が好きで、研究や事例の調査研究・機会があれば本なども書いて、発信したいと思っています。

https://imazemi.com/education/imazemi/

Writer:今永典秀