評価は会議室ですべきじゃない!現場ですべきなんだ!

自己紹介

はじめまして。豊岡市職員の藤田大輔と申します。私は2000年に大学を卒業し、但東町役場に入職しました。町民課、産業振興課に勤務し、2005年市町合併により豊岡市となって以後は、但東総合支所地域整備課、同市民生活課、介護保険課、兵庫県への派遣を経て、2016年4月に政策調整課行政改革係となりました。この時出会った「仕事」と「人」が私の公務員人生を大きく変えることとなりました。

仕事との出会い

行政改革係での仕事は、行政改革、行政評価や業務改善などでした。この中でも特に行政評価に興味を持ちました。行政職員の中には、「評価」という言葉を聞くと、「成績をつけられる」「よくないところを指摘される」「予算を削られる」「人を減らされる」など、「評価=嫌なもの」というイメージを持たれる方がほとんどではないでしょうか。私も最初はそのように思っていました。しかし、評価について勉強していくうちに、そうではない部分が見えてきました。つまり、評価(の手法)には、評価対象の事業についてその価値や良さを発見したり、事業の目的を明確にしてその事業のやり方を改善したり、さらには行政外部と協力(協働・共創)するためのツールにすることができるものもある、ということが分かってきたのです。

人との出会い

行政改革係となったとき、私は大きな影響を受ける副市長に出会いました。豊岡市の副市長は2名で、1名は元市役所職員の方で、もう1名は民間企業出身の方でした。この民間企業出身の副市長は、豊岡市出身ではありませんでしたが、民間での実績を十分にお持ちの方でした。しかし、公共政策に関する知識不足を感じられ、自分で勉強するために自費で東京の大学にほぼ毎週末通っておられました。副市長として所管分野での実績も挙げられていましたが、その学ばれる姿を見て、他市出身で、しかも民間企業で実績のある方がこれほど勉強されているのに、豊岡市出身の私が地元のために何も勉強しないのはおかしい、と強く思ったのです。この副市長の「悪影響」を受けて、私は勉強を始めてしまいました(笑)

 

修士課程

2017年4月に佛教大学社会学研究科修士課程に入学し、行政改革と行政評価の関係について勉強しました。社会学という学問の性質からかもしれませんが、民間会社役員、医師、看護師、会社経営者、公務員など文理関係なく、非常に幅広い職種から社会人学生が集まっていました。多種多様な興味を持って研究されている同じ社会人学生との異種格闘技的な交流は、とても楽しかったのを覚えています。一方で週末に大学に通うために、家庭内(私は共働き2児のパパです)の調整とお金の工面にとても苦労しました。

博士課程

博士課程では行政評価に絞って研究を行いました。研究を進める上で最も苦労したのは、研究方法論や研究デザインなどでした。これは、ここで詳しく説明することはできませんが、学術論文を書く(あるいは読む)上での基礎になる内容で、科学哲学から特定の研究分野における定式化された方法まで、非常に広範囲に渡るものです。若くて頭の柔らかい時期に勉強しておくべきだったかもしれませんし、未だに十分に消化できていないと感じます。私たち実務家は、興味深い事例を多く持っていても、それを料理する方法や道具を知らないため、事例という素材を生かした美味しい料理のレシピがなかなか思い付きません。私は、この原因のひとつが研究方法論などの理解不足にあるように感じました。博士課程の間、コロナ禍で学会発表やゼミがZoomなどになったことは、地方に住む私にとっては幸いでした。そのお陰で、リアルで面識がない遠方の先輩研究者の方々からもアドバイスを頂くことができました。無事に博士論文を書き上げることができたのは、仕事と人との出会いがあったからだと思います。お世話になりました方々に改めて感謝申し上げます。

2022年にJIAM(全国市町村国際文化研修所)でお話しさせていただいたときの様子

拙著の宣伝!『地方公共団体における行政評価の変遷と問題点』公人の友社

研究室の先輩の勧めもあり、身のほど知らずにも、博士論文を大幅に加筆修正して2024年7月に本書を出版させていただきました。日本において行政評価は、行政改革におけるコスト削減・人員削減などの手法として使用されました。これは「総括的評価」と総称されることが多いと思いますが、いわゆるコスパの良し悪しを判断する評価です。このため前述のように、行政職員の間に「評価=嫌なもの」という印象が流布したのだと思います。一方で、そうではない評価も存在し、例えば「形成的評価」と呼ばれるものや「ロジックモデル」というツールも、よりよい成果を出すために用いることができる評価です。しかしながら現在、多くの地方公共団体における行政評価が機能不全に陥っていると言われています。それは何故なのでしょうか?いえ、そもそも評価とは何なのでしょうか?本当に三重県の事務事業評価が最初の行政評価だったのでしょうか?評価によるPDCAサイクルは本当に可能なのでしょうか?EBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)に取り組めば、客観的な評価ができるのでしょうか?このような数々の疑問から取り組んだ博士課程における研究をまとめたものが本書です。本学会誌「地域活性研究」に掲載いただいた論文も加筆修正して本書に収めています(査読していただいた先生方ありがとうございました)。第9章で扱っている豊岡市の事例は、現在進行形の事例です。首長の交代と評価制度の変化や、まちづくりの方向性に関する価値判断の対立について触れていますので、行政評価のご担当の方だけでなく、現場で頑張っておられる第一線の行政職員の方々や、まちづくりに携わっておられる、あるいは興味をお持ちの民間の方々にも読んでいただきたいと思っています。「評価は会議室ですべきじゃない!現場ですべきなんだ!」そんな私の想いが感じていただけると思います。でもなぜか、アマゾンでは出版日が2023年になっています。2024年の出版なのに(涙)2021年4月に秘書広報課に異動となり、2024年11月現在は市長の秘書をしていますが、評価に関する研究は私のライフワークと思っています。連絡をいただければいつでもご相談にのりますのでお気軽にどうぞ!