【初級生成AI講座】生成AIの地域課題解決への応用(鈴木和浩)(3)

第1章:導入(生成AIと地域活性化の基本概念)

  1. 地域活性化における生成AIの可能性
  2. 生成AIの地域課題解決への応用
  3. 生成AI導入のステップ

「初級生成AI講座」の第1回では、生成AIが地域活性化にもたらす無限の可能性を探りました。続く第2回では、いよいよその魔法の杖を手に取り、地域が抱える具体的な課題に対して、生成AIがいかに応用され、解決の糸口となるのかを深掘りしていきましょう。

1.はじめに

近年、生成AI(Generative AI)の進化が目覚ましく、多様な分野で活用が進んでいる。その中でも、地域が抱える課題を解決するための応用が注目を集めている。日本では、少子高齢化や地方経済の停滞、行政サービスの非効率性、災害対応の脆弱性といった課題が山積しており、これらに対して生成AIがどのように貢献できるのかが議論されている。本稿では、地域課題を整理し、生成AIの具体的な活用事例を紹介しながら、その可能性について考察する。

2. 地域が抱える主要課題

2.1 労働力不足と雇用ミスマッチ

少子高齢化の進行により、地方の労働人口減少が深刻な問題となっている。企業は必要な人材を確保できず、一方で求職者は自身のスキルと合致する職を見つけにくい状況だ。これに対し、大阪府では、生成AIを活用した雇用マッチングモデルを開発し、求職者のスキルと企業のニーズを自動分析する仕組みを導入した【1】。これを機械的なマッチングに終わらせてしまうのは惜しい。地域に根ざした「育成型マッチング」を組み込むことで、求職者のスキル不足を解消し、地域産業の活性化にもつながる。生成AIを活用した学習プログラムと連携させ、未経験者でもスキルアップしながら職に就ける環境を整備することが、より実効性のある解決策となる。

2.2 行政サービスの非効率性

行政の業務負担は増大する一方で、人手不足が進む中、業務の効率化が求められている。福岡市では、生成AIを用いた議事録の要約やFAQの自動作成を導入し、職員の負担を軽減【2】。また、横浜市では、ゴミ収集のルート最適化に生成AIを活用し、交通事故リスクの低減と業務効率の向上を実現した【3】。これが、技術導入を目的化してしまうと、本来の「効率化」の意義が薄れてしまう。住民と職員が共にAIの活用を学び、実際の業務フローに根付かせることが重要だ。例えば「生成AI活用ラボ」のような場を設け、行政と住民が共に試行錯誤しながらAIの最適な使い方を探るプロセスがあれば、より実効性の高い導入が可能になる。

2.3 地域活性化の停滞

地方の魅力を発信し、活性化を図ることは重要な課題である。八丈島では、中学生が生成AIを活用し、観光PRコンテンツを制作。地域の魅力を新しい形で発信する取り組みが進んでいる【4】。また、天草市では、地元事業者と進出企業が連携し、生成AIを活用した地域課題解決ワークショップを開催した【5】。今後、単なるPRにとどまらず、地域に根ざしたストーリーテリングを強化することがカギになる。例えば、地域の歴史や伝説をAIが学習し、インタラクティブな観光ガイドとして提供することで、訪問者に没入感のある体験を提供できる。生成AIを使って地域の「語り部」としての役割を果たす仕組みを作ることで、地域活性化をより持続的なものにできる。

2.4 災害対応の脆弱性

自然災害が多い日本では、リアルタイムでの情報収集と迅速な対応が求められる。Googleの降水量予測AIは、5分単位での降水量予測を可能にし、災害時の情報提供に大きく貢献している【6】。当然ながら、テクノロジーに依存するだけでは十分ではない。防災の意識を地域に根付かせるために、教育との連携が不可欠だ。例えば、小学生向けの「AI防災アドベンチャー」を開発し、遊びながら防災知識を身につけられる環境を整えることが、将来的な災害対応力の向上につながる。

3.今後の展開

3.1 47都道府県別のカスタムモデル開発
Googleと東京大学松尾研が主導するプロジェクトでは、2027年までに全国47都道府県向けの生成AIモデルを開発予定【7】。ただし、大企業や国主導の開発だけに依存するのではなく、各地域が主体的にカスタマイズできる仕組みが求められる。例えば「ローカルAI開発コミュニティ」を形成し、地域の課題に即したデータを蓄積しながら、住民自身がAIを活用できる環境を整備することが、より持続可能な地域DXの実現につながる。

4. 結論

生成AIは、労働力不足の解消、行政サービスの効率化、地域活性化、災害対応の強化など、多様な課題の解決に貢献する可能性を秘めている。しかし、その導入には技術的・倫理的な課題が伴い、これらを克服するための取り組みが欠かせない。最も重要なのは、「AIの導入」がゴールではなく、地域の持続可能な発展に向けた「共創のプロセス」を生み出すことだ。自治体、住民、地元企業が一体となり、AIを単なるツールではなく「地域のパートナー」として位置づけることで、より実践的な活用が可能になる。今後、全国規模での導入が進むにつれ、生成AIは地域社会に深く根付き、「新しい地域のかたち」を創る存在となることが期待される。

参照資料

大阪府での雇用ミスマッチ解消AIモデル導入事例https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17B0U0X10C24A6000000/

福岡市の行政サービス効率化(議事録要約・FAQ作成)https://service.customedia.co.jp/marketing/local_government-ai/

横浜市のゴミ収集ルート最適化https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2406/19/news204.html

八丈島の観光PRコンテンツ制作(中学生の生成AI活用事例)https://leadingdxschool.mext.go.jp/report/2003/

天草市の地域課題解決ワークショップhttps://www.city.amakusa.kumamoto.jp/kiji00312914/index.html

Googleの降水量予測AIによる防災情報提供https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17B0U0X10C24A6000000/

東京大学松尾研とGoogleの連携プロジェクト(生成AIの構築と人材育成)https://weblab.t.u-tokyo.ac.jp/news/2024-06-25/

自治体職員向けデータクリーニング研修https://chapro.jp/account/17949/article/2609

八丈島でのプロンプト設計ガイドライン策定https://leadingdxschool.mext.go.jp/report/2003/

AI支援サービスの住民満足度向上に関する調査https://service.customedia.co.jp/marketing/local_government-ai/

兵庫県の地域DX人材育成プログラムhttps://souwa-ka.com/blog/20250222

オープンソース型プラットフォームによる自治体間ノウハウ共有https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2406/19/news204.html