【初級生成AI講座】AIチャットボットの導入

AIチャットボットの導入
地域情報提供のためのチャットボットの作成と運用方法

高価なツールはもう不要!AI活用の新しいカタチ

「ゴミの分別方法がわからない」「週末のイベント情報を教えて」「最寄りの避難所はどこ?」地域に住む人や訪れる人が抱くこんな疑問に、24時間365日、多言語で自動的に答えてくれるアシスタントがいたら、とても便利だと思いませんか?かつては、こうしたAIチャットボットの導入には高価な専門ツールが必要でした。しかし今、時代は大きく変わりました。生成AIの「頭脳」そのものであるファンデーションモデルと、それをプログラミング不要で活用できるノーコードツールの登場により、誰でも、低コストで、驚くほど賢いAIアシスタントを作れるようになったのです。今回の講座では、難しいプログラミングの話は一旦脇に置き、**「Google NotebookLM」「Google Opal」**といった無料のツールを活用して、地域の情報提供を効率化する具体的なステップを解説します。

よくある誤解をスッキリ解消!AIの基本用語

AIチャットボット作りを理解するために、まずよく混同されがちな言葉を整理しましょう。

  1. ファンデーションモデル(AIの「頭脳」)
  • 例:Gemini, GPT-4など
  • インターネット上の膨大な情報から学習した、非常に賢いAIの「頭脳」そのものです。文章を理解し、質問に答える能力の源泉であり、様々なサービスの裏側で動いています。
  1. AIチャットサービス(「頭脳」を使った「製品」)
  • 例:Google Gemini, ChatGPTなど
  • ファンデーションモデルという「頭脳」を使い、私たちが対話形式で手軽に使えるようにした「製品(アプリケーション)」です。「ChatGPT」という名前の「頭脳」があるわけではなく、GPT-4という「頭脳」を使った製品が「ChatGPT」、と理解するのがポイントです。
  1. ノーコードツール(「頭脳」を簡単操作で使う「道具」)
  • 例:Google NotebookLM, Google Opal
  • 専門知識がなくても、画面上の操作だけでAIの「頭脳」を借りて、自分だけのチャットボットなどを作れる「道具」です。今回の主役はこれです。

ステップ1(内向きの情報整理):NotebookLMでAIに地域の先生になってもらう

住民や観光客に情報を提供する前に、まずは自分たちの手元にある情報をAIに学習させ、**組織内部で活用できる「地域の専門家AI」を育ててみましょう。このステップに最適なのが「Google NotebookLM」**です。NotebookLMとは?プログラミング不要で、手持ちの資料(PDF、テキスト、Webサイトなど)をアップロードするだけで、その内容についてAIと対話できるツールです。

【具体的な活用ステップ】

  1. AIの教科書を集める:
  • 町の公式ウェブサイトのURL
  • 観光パンフレットやゴミ分別ガイドのPDFファイル
  • よくある質問とその回答をまとめたテキストファイル
  1. NotebookLMに教科書を読み込ませる:
  • GoogleアカウントでNotebookLMにログインし、新しい「ノートブック」を作成します。
  • 集めた資料を、ドラッグ&ドロップなどで全てアップロードします。
  1. AIと対話してみる:
  • 資料の読み込みが終わったら、画面下のチャット欄に質問を入力してみましょう。
  • 「きらめき町の燃えないゴミの日はいつ?」
  • 「きらめき渓谷へのアクセス方法を教えて」
  • NotebookLMは、アップロードした資料の内容だけを根拠に回答を生成してくれるため、インターネット上の不確かな情報に惑わされず、正確な答えを得られます。

このステップだけでも、新人職員向けの研修ツールとして使えたり、担当者が素早く情報を確認したりと、業務の効率化に大きく貢献します。

ステップ2(外向きの情報提供):Opalでチャットボットを一般公開する

NotebookLMで情報の整理ができたら、次はいよいよ、その知識を住民や観光客といった「外の人」に提供する番です。ここで活躍するのが**「Google Opal」**のようなノーコード・AIミニアプリ構築ツールです。Opalとは?「こんな機能のアプリが欲しい」と自然な言葉で指示するだけで、AIが自動でアプリを開発してくれる実験的なツールです。これを使えば、NotebookLMで整理した情報を元にした公開用のチャットボットを、プログラミングなしで作成できます。

【具体的な構築イメージ】

  1. Opalに役割を指示する:
  • Opalにアクセスし、「きらめき町の観光情報とゴミ出しルールについて答えられるチャットボットを作って」のように、作りたいものを具体的に指示します。
  1. AIの教科書(情報源)を指定する:
  • NotebookLMで整理した「よくある質問と回答集」のテキストなど、チャットボットが参照すべき情報源を指定します。
  1. AIがアプリを自動生成:
  • 指示に基づき、Opalがユーザーからの質問を受け付け、指定された情報源を元にGeminiモデルが回答を生成し、表示するという一連の流れ(アプリ)を自動で構築してくれます。
  1. テストして公開!
  • 生成されたアプリをプレビューで試し、問題がなければウェブサイトに埋め込むためのリンクを取得して公開完了です。

知っておきたい注意点と、その先のステップ

ノーコードツールは非常に強力ですが、万能ではありません。

  • ツールの限界を理解する: Opalのようなツールはまだ実験的な段階であり、複雑な機能には対応できない場合があります。まずは簡単なQ&Aから始めるのが成功の秘訣です。
  • 情報の更新は手動で: AIの知識は、あなたが与えた「教科書」が全てです。イベント情報などが新しくなったら、忘れずに情報源を更新しましょう。
  • 最終的には「人」へ: 複雑な相談や緊急の問い合わせには対応できません。「解決しない場合はこちらへ」という形で、必ず有人窓口への導線を設けましょう。

そして、もし将来的に「もっと複雑な機能が欲しい」「デザインを完全にオリジナルにしたい」となった時、初めてプログラミングでAIの「頭脳」を直接操作する**「API活用」**という次のステップが見えてきます。今回紹介したノーコードでの経験は、その際の企画や設計に必ず役立つはずです。

まずは無料で触ることから始めよう!

AIチャットボットの導入は、もはや専門家だけのものではありません。NotebookLMで内部の情報を整理し、Opalで外部に公開する。この流れなら、プログラミングの知識がなくても、予算が限られていても、今日からすぐに第一歩を踏み出せます。完璧なものを目指す必要はありません。まずは「ゴミの分別案内」だけでも、住民にとっては大きな助けになります。ぜひ、あなたの地域でもAIとの協働を始めてみませんか?