【交流】国際P2M学会が持っている問題意識は、なるほどです

国際P2M学会に寄稿したところ、同学会が出版した実践プログラムマネジメント(日刊工業新聞)という本をいただきました。これから、国際P2M学会と地域活性学会は交流を進めますが、この本を読んで学会交流を深めたいと考えています。本日は、はじめにの部分で、国際P2M学会がどのような問題意識で結成されたのかという設立経緯と同学会が出版したこの本がどのような議論を経て作られたのかが分かる部分を抜き書きさせていただきます。地域活性学会もこのような出版ができるといいですね(斉藤)。

国際P2M学会の設立経緯

経営学の泰斗、ドラッカー教授の有名な言葉に「マネジメントは一般教養である」というのがある。このマネジメントはもちろん企業経営を意味していよう。本書は新たに「プログラムマネジメント」という概念が企業の研究開発と、その管理に携わる方々や、大学で研究に日々励んでいる大学院生諸君にとって同じように一般教養となって欲しいと願って書き上げたものである。

この分野においては、まずプロジェクトマネジメントという概念が米国で生まれた。それを学んだ日本のプロジェクトマネージャーたちは、東南アジアや中東諸国の都市づくりや化学コンビナートの建設において、見事な工程管理の下で予定通りの業務を遂行して高い評価を得た。しかし、為替レートの変動、途上国の人件費の高騰や政治不安などの要因は、企業に期待された利益を与える代わりに大幅な赤字をもたらすところとなった。国内でも、シャープが三重県亀山に薄型テレビの一貫製造工場を建設するのを、サムスン電子の技術者が勝利を確信しながら見物していたとの逸話が報じられた。社内で垂直統合型の制作をすることが、もはやグローバル化された世界経済下で時代遅れとなっていることを示す典型例と言えよう。

このような企業戦略の失敗を経験する中から、プロジェクトマネジメントの上部概念として、多くのプロジェクトを正しく取捨選択する評価手法、政治や経済の周辺環境の変化にプロジェクトの遂行形態を適切に対応させる手法、情報革命が進展し通信と流通コストが国境を越えて極小化へと向かっていく下での研究開発管理手法としてプログラムマネジメントの概念が日本で生まれるところとなった。そして、プロジェクト・プログラムマネジメント(Project & Program Management、略称P2M)という体系が日本独自の標準として形成され、その普及と体系の一層の進展を目指して国際P2M学会が組織された。(略)

大会での報告と批判を仰ぎながら本を出版した

本書をまとめるに当り、5人が十数回もの会合を持ち、議論の成果を、学会の春季、秋季の大会で報告し批判を仰いできた。有益なコメントや助言を頂いた学会員の皆様に厚くお礼申し上げたい。また事例紹介に示した成果は、東京農工大学応用化学専攻の博士論文を参照している。学会の活動、発表論文、P2Mマネージャー資格取得方法などは、巻末に示す学会ホームページでまとめて示してあるのでぜひ参照されたい。

国際P2M学会 http://www.iap2m.org/