漁業経営の持続性確保と漁村地域の産業振興にむけた研究活動に従事

鳥居享司(鹿児島大学水産学部准教授)

漁業が衰退すれば島嶼域の経済や社会は崩壊の危機

2022年より本学会に入会させていただきました鹿児島大学水産学部の鳥居です。漁業経営の持続性確保と漁村地域の産業振興にむけた研究活動を行っています。魚介類を含めた「食」に関心があり、プライベートにおいても魚介料理店めぐりや料理づくりが趣味のひとつになっています。さて、我々の食生活が豊かなのは、健全な生産活動があってのこと。しかし、その生産活動の弱体化がすすんでいます。日本の沿岸から漁業が消えれば、我々の食生活の豊かさは失われますし、沿岸で暮らす人々の生活が成り立たなくなります。とくに島嶼域では漁業が主力産業になっているケースが少なくなく、こうした地域で漁業が衰退すれば島嶼域の経済や社会は崩壊の危機に直面する可能性があります。こうした観点から、漁業経営の持続性確立と地域経済の振興を目指した研究活動に従事しています。研究活動を通じて見つかった「課題」を、地域の方々との協働を通じて緩和することを目指しています。

問題解決の糸口は現場にある

近年は、島嶼域を対象に研究活動をすすめています。生産から出荷まで様々な条件不利を抱える島嶼域、そこでの漁業経営を安定的なものにするためにはどのような取り組みや政策的支援が必要なのでしょうか。問題解決の糸口は現場にあります。漁業者、漁協職員、自治体職員、流通・飲食関係者など生産から流通、消費に関わる方々と向き合い、現状への理解を深めるところから始まります。統計や書籍からでは分からないリアルな部分がみえる実態調査を重視しながら研究活動をすすめています。分析結果も現場の方々に示しながら、改善にむけた具体的な行動をともにしています。

学生を育て、同志としてともにする

大学の研究者に求められるもうひとつの役割は学生教育です。学生にとって大学4年間は社会に出るための仕上げの時期にもあたります。自身で研究テーマを選定し、研究計画を立てて遂行し、誰にでもわかりやすく論理的に説明できる能力の育成を支援しています。私の研究室に所属するゼミ生の多くは、水産系公務員や漁業系統団体への就職を希望しています。大学を卒業しても水産業の現場と関わり合いながら、その産業振興を支える役割を担っています。研究室を卒業したゼミ生に現場を案内してもらいながら調査をする、そういった機会も少しずつ増えてきました。日々指導したゼミ生は、いつのまにか漁業の現場を支える「同志」になっているのです。嬉しく、頼もしく思うとともに、学生教育に力を注ぎ続けねばと気が引き締まる瞬間でもあります。

Writer:鳥居享司(鹿児島大学水産学部准教授)