【政策研究】新しい資本主義の推進についての重点事項

政府が10月末にまとめる経済対策は①物価高対策②持続的賃上げ③投資促進④人口減対策⑤国土強靱化の5本柱だと新聞が伝えています。政府が発表した新しい資本主義の推進についての重点事項を以下にまとめました。赤字にしたところは斉藤が興味があるところです(斉藤)。

我が国経済は、コストカット経済からの歴史的転換点にある。新しい資本主義は、①構造的賃上げ、労働市場改革、リ・スキリングなど人への投資、②GX、AI、半導体、バイオ、量子など未来の成長分野への官民連携での投資促進、③スタートアップ育成など企業の参入・退出の円滑化、等により「冷温の」デフレ型・縮小経済を「適温の」成長型経済に転換する試み。物価高に対応できる賃上げ、所得向上をいかに持続的なものとしていくかとともに、地方、中小・小規模企業にも拡大していくかが問われている。コストカット型の冷温経済を適温の成長型経済に、3年間程度の「変革期間」で転換させる。このため、第一に、足元の急激な物価上昇への対応とともに、適度な物価高に対応できる賃上げ・所得向上を持続的なものとし、地方、中小・小規模企業にも拡大するとともに、地方、中小・小規模企業も含めた潜在的な成長力の強化・高度化に向けた投資促進等を抜本的に図る。このため、潜在成長力の強化に資する減税の実施をはじめ、経済対策の立案を行う。第二に、本年6月 16 日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」に従い、閣議決定した施策事項について、変革期間において、早期かつ着実な実施を図る。なお、減税の具体的措置については、今後の税制改正検討過程において検討する。

Ⅰ.経済対策

以下の点を中心に、経済対策を立案する。
① 足元の急激な物価高から国民生活を守るための対策
② 地方・中堅中小企業等を含めた持続的賃上げ、所得向上の実現
③ 成長力の強化・高度化に資する国内投資促進
④ 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動・推進
⑤ 地方の成長を図る国土強靭化など国民の安全・安心の確保
1.足元の急激な物価高から国民生活を守るための対策

2.地方・中堅中小企業等を含めた持続的賃上げ、所得向上の実現
減税措置
○ 中小企業等についての賃上げ税制について、繰越控除・措置の期限の在り方等減税措置の強化を検討する。
予算その他の措置
○ 「年収の壁」を乗り越えるための支援を新たな最低賃金が動き出す来月から実施するとともに、正しい制度理解、認識の周知を図る。
○ 最低賃金については、さらに着実に引き上げを行っていく必要がある。政府としては、引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の賃上げ
額についてしっかりと議論いただき、その積み上げにより 2030 年代半ばまでに全国加重平均が 1,500 円となることを目指す。
○ 中小・小規模企業の賃金引上げ及び人手不足解消のため、省人化(人手不足解消)・省力化(高いエネルギーコストの節約)投資への簡易で、即効性
がある支援措置を実施する。
○ 地方においても賃上げが可能となるよう、中小・中堅企業が工場等の拠点を新設する場合、又は、大規模な設備投資を図る場合について、支援措置を
実施する。
○ 最低賃金の継続的な引上げのため、事業再構築や業務改善等の中小・小規模企業向けの支援措置を充実する。
○ 保証料の上乗せ負担とこれに対する支援措置の検討を含め、経営者保証を不要とする信用保証制度の創設を、年度内に前倒しして実施する。
○ 内閣官房及び公正取引委員会は、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を年内に策定する。具体的には、
・労務費について取引価格に転嫁する取組方針を、発注者側は経営トップまで上げて決定し、その取組状況を定期的に経営トップに報告すること
・定期的に労務費の転嫁について受注者側との協議の場を設けること
・受注者側が準備する根拠資料は、負担にならないよう、当該地域の最低賃金の上昇率、春闘の妥結額の平均上昇率など公表資料を可能な限り用いること等により、取引適正化に向けた取組を強化する。
○ 同一労働・同一賃金制について、労働基準監督署による調査結果を踏まえ、基本給・賞与の差の根拠の説明が不十分な企業などについて、文書で指導を行い、経営者に対応を求めるなど、その施行を徹底する。
○ 職務給の導入のため、ジョブの整理・括り方、人材の配置・育成・評価方法、ポスティング制度、リ・スキリングの方法、従業員のパフォーマンス改善計画(PIP)、賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例との関係、休暇制度等について事例を整理し、年内又は年度内に取りまとめる。この際、企業の実態に合った改革が行えるよう、自由度を持ったものとするとともに、中小・小規模企業等の導入事例も紹介する。
○ 職種別・エリア別に、賃金相場の前年との比較、求人数等について官民の求職・求人情報の共有化を本年度内に実施。処遇のよい職に助言できるよう、キャリアコンサルタント等へ情報共有を図るとともに、更にその充実を図る。
○ 非正規雇用労働者の正規化を加速化するため、有期雇用労働者等を正社員化する場合の支援措置を強化するとともに、対象となる有期雇用労働者の雇用期間の制限を緩和する。
○ 在職中の非正規雇用労働者のリ・スキリング支援を創設する。
○ 教育訓練給付の拡充策等について、年末までに結論を得る。
○ 省エネ効果の高い住宅の新築・リフォームや断熱窓・高効率給湯器への改修を支援する。
○ 資産運用業及びアセットオーナーシップの改革、並びに、資産運用業への新規参入と競争の促進等のため、資産運用立国にかかる政策プランを年内に策定する。

3.成長力の強化・高度化に資する国内投資促進
減税措置
○ 国内投資促進について、初期投資コスト及びランニングコストが高いため、民間として事業採算性に乗りにくいが、特段に国として戦略的に長期投資が不可欠となる投資を選んで、減税制度の創設を検討する。
○ 我が国においても、海外と比べて遜色なく民間による無形資産投資を後押しする観点から、特許権等の知的財産から生じる所得に対して優遇する減税制度の創設を検討する。
○ スタートアップのストックオプション関連の法制度や税制を早急に使い勝手のよいものとするため、株主総会から取締役会への委任内容の拡大等、会社法の特例を規定した法案の国会への提出を図る。また、ストックオプション税制の権利行使額の上限額の引き上げ等、減税措置の充実を検討する。
○ 企業の参入・退出を促進するため、親族や長く勤めた従業員が事業を承継する場合の事業承継税制について、減税措置に係る特例承継計画の申請期限の延長等を検討する。
予算その他の措置
○ 全ての金融債権者の同意を必要とせず、多数決により金融債務の減額を可能にする事業再構築法案を早期に国会に提出する。
○ 社会的起業家を育成するため、インパクトスタートアップの認証制度における企業選定を年内早期に実施する。
○ AI 用の計算資源や学習データが不足している状況に鑑み、その確保を図るとともに、利用・開発の促進を図る。
○ 民間企業・大学等による複数年度にわたる宇宙分野の先端技術開発や技術実証、商業化を支援する枠組みを設け、関連法案を早期に国会に提出する。
○ 認知症等のプロジェクト、先端半導体・蓄電池等の製造基盤の更なる拡大を進めるとともに、フュージョンエネルギー(核融合)についての支援措置を検討する。
4.人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動・推進
5.地方の成長を図る国土強靭化など国民の安全・安心の確保

Ⅱ.本年6月 16 日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」で決定した事項の変革期間における早期かつ着実な実施

1.人への投資・構造的賃上げと三位一体の労働市場改革

(1)三位一体の労働市場改革
○ ①リ・スキリングによる能力向上支援、②個々の企業の実態に応じた職務給の導入、③成長分野への労働移動の円滑化、の三位一体の労働市場改革を行い、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。
(2)目標
○ 同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国ごとの経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す。また、転職により賃金が増加する者の割合が減少する者の割合を上回ることを目指す。
(3)リ・スキリングによる能力向上支援
○ 国の在職者への学び直し支援策について、5年以内を目途に、過半が個人経由での給付が可能となるようにする。教育訓練給付に関しては、高い賃金が獲得できる分野、高いエンプロイアビリティの向上が期待される分野(IT、データアナリティクス、プロジェクトマネジメント、技術研究、営業/マーケティング、経営・企画、観光・物流等)について、補助率や補助上限の拡充について年末までに結論を得る。
○ 雇用調整助成金について、在職者によるリ・スキリングを強化するため、30 日を超えるような雇用調整となる場合には、教育訓練を求めることを原則とし、例外的にその日以降に休業によって雇用調整を行う場合は助成率を引き下げる等の見直しを検討する。
(4)個々の企業の実態に応じた職務給の導入
○ 職務給の導入のため、ジョブの整理・括り方、人材の配置・育成・評価方法、ポスティング制度、リ・スキリングの方法、従業員のパフォーマンス改善計画(PIP)、賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例との関係、休暇制度等について事例を整理し、年内又は年度内に取りまとめる。この際、企業の実態に合った改革が行えるよう、自由度を持ったものとするとともに、中小・小規模企業等の導入事例も紹介する。(再掲)
(5)成長分野への労働移動の円滑化
○ 失業給付制度について、自己都合で離職する場合は、求職申込後2か月ないし3か月は失業給付を受給できない。失業給付の申請時点から遡って例えば1年以内にリ・スキリングに取り組んでいた場合等について会社都合の場合と同じ扱いとする等、自己都合の場合の要件を緩和することとし、年末までに結論を得る。
○ 退職所得課税について、異なる企業への転職者が不利にならないよう、制度変更に伴う影響に留意しつつ、見直しを行う。
(6)適切な価格転嫁対策や下請取引の適正化の推進
○ 中小・小規模企業の賃上げ原資の確保のための適正な価格転嫁の慣行を定着させるため、公正取引委員会による特別調査の結果の公表など、取引適正化に向けた取組を一層強化する。
(7)国家公務員の育成・評価に関する仕組みの改革

2.GX・DX等への投資
(1)レジリエンス上の日本の優位性と国内企業立地促進・高度外国人材の呼び込み
①国内企業立地促進の考え方と戦略分野
○ 半導体・蓄電池・バイオものづくり・データセンターといった戦略分野を中心とした投資を推進する。
②高度外国人材の呼び込み
○ 高度外国人材呼び込みに向けて、制度面も含めた課題の把握・検討を行い、必要な対応を行う。
(2)GX・エネルギー安全保障
○ 「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」に基づき、GXの実現を通して、エネルギー安定供給、産業競争力強化・経済成長、脱炭素を同時に実現するための取組を進める。
・エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXに向けた脱炭素の取組
・「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行
・国際展開戦略
・社会全体のGXの推進
○ 市場のライフサイクル全体で資源を効率的・循環的に有効利用する循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を産官学で連携して進める。
(3)食料安全保障
○ 「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づき、食料・農業・農村基本法の改正法案を本年度中に国会へ提出することに向け、見直しの作業を加速する。
・「平時から」の食料安全保障の確立
・農林水産業の「グリーン化」
・農林水産物・食品の「輸出拡大」
・「スマート」農林水産業
(4)AI
①国際的な議論とリスクへの対応
○ 個人情報の不適切な利用、セキュリティに関する不安、偽情報・誤情報による混乱、著作権侵害のおそれ等、AIに関する多様なリスクに関して、検討し対応する。
②AIの利用の促進
○ 政府機関での生成 AI の活用は、機密情報漏洩等のリスクがある一方で業務効率化等に有効な可能性もあり、試験的な利用等を開始し、知見を集積し、共有する。
(5)DX
○ Web3.0 の推進に向けた環境整備を図るとともに、ポスト5G、6G の実現を図る。
○ 地理空間情報を用いた建築・都市の DX の加速等、DX 投資促進に向けた環境整備を図る。
(6)官民連携による科学技術・イノベーションの推進
①量子技術
○ 量子コンピュータ、量子暗号通信、それらの基盤技術についての研究開発等。
②健康・医療
○ 認知症等の脳神経疾患の発症・進行抑制・治療法の開発。また、ゲノム創薬をはじめとする次世代創薬の推進。
③フュージョンエネルギー(核融合)
④国立研究機関による研究開発力の強化
⑤大学ファンドによる支援
⑥国際的な人的ネットワークや研究成果へのアクセスの確保
⑦博士課程学生・若手研究者への支援等
(7)クリエイターへの支援
○ アニメ・ゲーム・エンターテイメント・漫画・映画・音楽・放送番組等の分野について、来春に向けて、慣行是正を含め、官民連携で一体的な施策の検討を行う。

3.企業の参入・退出の円滑化とスタートアップ育成5か年計画の推進
(1)スタートアップ育成5か年計画の推進
○ スタートアップへの投資額に着目し、「スタートアップ育成5か年計画」の実施により、5年後の 2027 年度に 10 倍を超える規模(10 兆円規模)とすることを大きな目標に掲げて、 ①スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築、②スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化、③オープンイノベーションの推進、の3本柱の取組を官民一体で進める。
○ メンターによる支援事業の拡大・横展開、海外における起業家育成、グローバルスタートアップキャンパス構想等を進める。
○ ベンチャーキャピタルへの出資機能の強化等を行う。
○ オープンイノベーション促進税制の適用期間延長等の検討、副業・兼業の推奨等を行う。
(2)事業不振の場合の総合的な支援策
○ 企業経営者が、事業不振の際に、M&A・事業再構築・事業承継・廃業等の幅広い選択肢について、早い段階から専門家に相談できる体制を、全国にある中小企業支援実施機関の体制整備も含めて、構築する。あわせて、事業承継税制の延長・拡充を検討する。

4.社会的課題を解決する経済社会システムの構築
○ インパクトスタートアップの認証制度の創設と認定企業への公共調達での優遇措置の導入、インパクト投資の手法等を具体化するコンソーシアムの設置等、インパクトスタートアップへの総合的な支援策の推進。
○ 競争当局のアドボカシー(唱導)機能の強化。
○ コンセッション(PPP/PFI を含む)の強化

5.資産所得倍増プランと分厚い中間層の形成
(1)資産所得倍増プランの推進
○ 第一に、投資経験者の倍増を目指す(5年間で、NISA 総口座数(一般・つみたて)を 1,700 万から 3,400 万へと倍増させることを目指して制度整備を図る)。第二に、投資の倍増を目指す(5年間で、NISA 買付額を 28 兆円から 56 兆円へと倍増させる)。
○ 新しい NISA 制度(来年1月)の開始に向けた対応を進める。
○ 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設をすすめる。
○ 金融経済教育の充実。
○ 世界に開かれた国際金融センターの実現。
(2)資産運用立国に向けた取組の促進

6.経済社会の多極化
(1)デジタル田園都市国家構想の実現
①デジタル田園都市国家の実現に向けた基盤整備・中山間地の生活環境改善
○ 規制・制度の一括改革、光ファイバ・5G等のデジタルインフラの整備、中山間地の生活環境改善等を行う。
②デジタル田園都市国家を支える地域交通、ヘルスケア、教育の整備
○ 自動運転・ドローン等の社会実装、地域公共交通のリ・デザイン、地域包括ケアシステムの整備、GIGA スクール構想の推進等。
③デジタル田園都市国家構想の前提としての安心の確保
○ 広域交通インフラの整備、持続可能な地域経済社会の実現等を行う。

7.日本の魅力を活かしたインバウンドの促進
○ 観光立国推進基本計画に基づき、2025 年より早期にインバウンド消費5兆円、国内旅行消費額 20 兆円を達成する。また、狭義の観光に加え、文化芸術、スポーツでの取組を進める。

8.個別分野の取組
(1)宇宙
(2)海洋
(3)対外経済連携の促進
(4)グローバルヘルス(国際保健)
(5)福島をはじめ東北における新たな産業の創出