大和田順子（教育テック大学院大学教授）

フルオンラインの専門職大学院が開学

2025年4月、「教育テック大学院大学」が開学します。教育DXと学校経営に特化したフルオンラインの専門職大学院です。修士論文ではなく「教育構想実践書」を作成し、教育情報学修士または教育経営学修士を取得することができます。私は今年3月まで同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーションコースの専任教員をしていましたが、任期を終え、今度は新しい大学院でSDGs教育や社会起業などの授業およびゼミを担当します。教育の世界でイノベーションにチャンレジします。

教育分野のDX、地方の学校経営、リスキリングに特化

近年、日本の教育界は急速に変化し、４つの課題に直面しています。１つ目は教育DX人材の不足です。GIGAスクール構想の推進や、コロナ禍によるオンライン学習の急速な普及により、デジタル技術の活用が前提とされる教育環境が広がり、従来の一斉指導型の授業から、個別最適化された学びや協働的な学びが求められるようになり、現場の教員や教育に携わる人々のスキルの習得が必要です。２つ目は、民間企業の経験をいかして、教育界に貢献したいという熱い想いを持った方々が多くいる一方、教育に関するリスキリングや学び直しの場は十分に提供されてこなかったことが挙げられれます。民間で培った経験・スキルを活かしながら教育界で活躍していくという点では、教育・経営・ICTをバランスよく学ぶことが欠かせません。３つ目は、少子化による学校経営の危機です。地方の私立学校は、少子化による学生数減少、教育改革の遅れ、財務健全化の課題、地域との連携不足、国際化対応の遅れといった経営課題に直面していますが、これは都市部でも同様です。そして４つ目は、アジアを中心に学校が足りないということです。UNESCOの統計によれば、2019年で世界には、約2億2千万人の高等教育在籍者がいますが、年率3.5％で成長し、年約700万人が毎年増加しています。このグローバルな教育ニーズに応えていく必要があります。これら4つの教育界における社会的課題に応えるための学びの場として、本学は設立されました。

このように、学校だけでなく、企業や地域、社会全体において、テクノロジーを活用して学び方のイノベーションを推進する人材が求められています。本学は教育DXや学校経営のスペシャリストを育成することを使命とし、そうしたスペシャリストを育成することにより、学校経営の効率化、教育の質向上、学習する組織の拡大により、サステナブルな社会の実現に教育面から貢献していきたいと考えています。本学を運営する学校法人OCCは、大阪の阿部野で70年以上大阪キリスト教短期大学を運営してきましたが、自らも経営改革に取り組んでいます。短大に教育テックコースを作り今年春には93名のアジアからの留学生、日本語別科には約300名の留学生が入学しました。そして、次が大学院の開学です。

小中学校の先生、企業研修や生涯学習に携わる人も

どのような人に学んでいただきたいかというと、教育現場はもとより、企業や団体の研修担当者、生涯教育や地域で人材育成に携わる方々、さらに教育産業で働く方々などです。例えば、企業や団体における人材育成を担当している方には、研修や教育プログラムの効果を高めるための最先端のテクノロジー活用法を学べます。また、生涯学習や地域の人材育成に従事されている方々には、持続可能な社会の実現に欠かせない能力である「トランスフォーマティブ・コンピテンシー」について学んでいただきたいと考えています。さらに、教育産業に携わる方々にとっては、教育サービスの開発や市場ニーズに応じた新しいビジネスモデルを構築する力を養うことが期待されます。本大学院の授業はフルオンラインで提供しますので、働きながら修士号を取得することが可能です。（チームビルディングの為の合宿もあります。）教育と情報、そして経営の三領域を学際的に学ぶカリキュラムを提供し、教育の現場で必要なICTスキル、マネジメント能力、そしてリーダーシップを学際的に学び、教育業界や自分の職場における革新を実現するための実践的な知識を得ることができます。なお、厚生労働省の人材開発支援助成金「人への投資促進コース」という制度を活用すれば学費が最大９割補助されます。教育の分野でリーダーシップを発揮し、社会や組織にイノベーションをもたらしたいと考えている方々との出会いを求めています。皆さまご自身、皆さまのお知り合いに関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください。