ブラックホール型自治体
少し解釈が難しいのですが、地方消滅2で「ブラックホール型自治体」をコーホート人口推計の計算において若年層が市区町村外に移動すると仮定した計算を行い、若年女性人口の減少率が50%未満である一方、若年女性人口が市区町村外に移動しないと仮定したコーホート人口推計の計算において減少率が50%以上の自治体として抽出しています。またこうした市区町村は人口の増加分を他地域からの人口流入に依存していると考え、しかも当該地域の出生率が非常に低い自治体を抽出しています。これらの要件に合致する自治体はいわば人口の「ブラックホール型自治体」と呼ぶことができるとこの本で定義しています。つまりブラックホール型自治体とは人口の増加分を他地域からの人口流入に依存し、しかも当該地域の出生率が非常に低い自治体のことです。
ブラックホール型自治体25
自立持続可能性自治体名 |
人口(人) |
概 要 |
(北海道)喜茂別町 |
1,908 |
【トイレ利用者集中】非競争性が顕著な自治体。喜茂別町の合計特殊出生率は1.06と全国平均(1.33)と比べ大きく下回る。人口は1908人と少ない。また同町に目立った観光スポットはない。しかし北海道後志総合振興局が公表した2023年度上期(4~9月)の観光入り込み客数が前年度同期比約2・3倍の406万人と異例の伸びを見せた。これは小樽市(365万人)などを抑え管内の市町村トップになった。一時はカウント間違いの疑義が生じ、公表データが削除されたが、正しい数字として再公表された。入り込み客数は国道230号・中山峠にある道の駅「望羊中山」のトイレ2か所に設置したカウンターで計測している。6月頃から実数より上振れしている疑いが生じ、9月に計測器を取り換えたという。喜茂別町は10月以降も前年度同月比で2倍以上の伸びとなっており、担当者は「精度を疑うほどではないが、今後はしっかり確認したい」と語っている。合計特殊出生率が著しく低く、他地域から400万人を超える人口流入を記録し、ブラックホール型自治体となった。 |
(北海道)占冠村 |
1,468 |
【企業城下町/短期就労外国人集中】トマムリゾートの観光入込客数は約176万人(2017年)。同リゾートでは社員用住宅を整備し海外の労働者を積極的に雇用してきた。このため村の総人口1,500人のうち約500人が外国人という構成比を示している。トマムを支える外国人労働者の多くは短期の滞在者である。 |
(埼玉県)蕨市 |
75,067 |
【ベッドタウン/トルコ系クルド人集中】蕨市は比較的に家賃が安い、交通の便などが良いなどの理由から外国人居住者が増えており、近隣の川口市と同様にして、トルコ系クルド人や中国本土の中国人などが居住している。 トルコ系クルド人などからは「ワラビスタン」と呼ばれることがある。 |
(埼玉県)茂呂山町 |
34,276 |
【ベッドタウン/学生集中】毛呂山町では、周辺大学に通う学生が多く若年層の流入人口が多い。 |
(千葉県)浦安市 |
9,977 |
【企業城下町/ディズニーランド観光客集中】浦安市には東京ディズニーランド(年間観光客数1510万人)と東京ディズニーシー(1240万人)がある。一方、同市の合計特殊出生率は0.96と極端に低い。人口戦略会議がブラックホール型に千葉県浦安市を分類したことについて、浦安市の内田悦嗣市長は市議会で「上っ面だけを評価したもの」と述べた。さらに、「消滅自治体というセンセーショナルな言葉を使い、自治体間競争をあおるような手法と批判。 |
(千葉県)酒々井町 |
20,149 |
【ベッドタウン/CA、グランドスタッフ、学生集中】酒々井市には酒々井プレミアム・アウトレット(年間観光客数660万人)がある。また20代、30代の女性が市内に大量流入しているが合計特殊出生率が1.05と全国平均(1.33)と大きく下回る。順天堂大学さくらキャンパス(印西市)スポーツ健康科学部と医学部の1年生は全寮制で大学生活をスタート。2年次以降は家賃が安くキャンパスに近い酒々井市を選択し居住している学生が多い。また成田空港に近く、酒々井駅前のマンションにはCAやグランドスタッフが多く住んでいる。 |
(東京都)新宿区、文京区、台東区、墨田区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区 |
6,866,553
|
東京一極集中 |
(東京都)青ヶ島村 |
169 |
【離島】非競争性が顕著な自治体。日本一人口が少ない村、断崖絶壁に囲まれており上陸が難しい島。観光客の数は1,379人(2019年) |
(京都府)京都市 |
1,437,845 |
【インバウンド集中】観光客数5,028 万人 |
(大阪府)大阪市 |
2,794,754 |
大都市集中 |
資料:斉藤俊幸作成、人口は2024年11月1日現在
注)東京区部の人口内訳:新宿区349,385人、文京区240,069人、台東区211,444人、墨田区272,085人、品川区422,488人、目黒区288,088人、大田区 748,081人、世田谷区943,664人、渋谷区243,883人、中野区344,880人、杉並区591,108人、豊島区301,599人、北区355,213人、荒川区217,475人、板橋区584,483人、練馬区752,608人=6,866,553人
【地方消滅2を読む】自立持続可能性自治体の正体、実は企業城下町、新興ベッドタウン、大学立地、米軍基地(2)https://chiiki-kassei-jk.com/archives/10870
【地方消滅2を読む】自立持続可能性自治体、ブラックホール型自治体リストから見えてくるもの(1)https://chiiki-kassei-jk.com/archives/10798
【参考文献】消滅、撤退、農村たたみ反対、むらつなぎの本のご紹介 https://chiiki-kassei-jk.com/archives/10826