WHYかHOWか-実務論文の書き方教室報告(2)

西川洋行師範(県立広島大学地域基盤研究機構 地域連携センター 准教授)

先行研究は実務者にとってかなり苦労する

学術研究論文と実務研究論文の違いは研究動機の違いである。研究者は自分自身の研究業績にしたいという動機を持っている。実務者は、実務研究論文は実務の現場そのものを伝えることが動機である。言い換えると、多くの人に読んでもらうために公表することが動機である。研究者の学術研究論文はWHYの応えることであり、実務者の実務研究論文はHOWに重点がある。先行研究は実務者にとってかなり苦労する。地域活性学会の実務論文研究には先行研究レビューはない。そのかわり背景や取組みの経緯を書いてほしい。学術研究論文でいう先行研究そのものが不要ではなく、暗黙知になっているような先行研究は書かないといけない。それに合わせ背景や経緯は説明する必要がある。そこには先行課題や先行事例を書くことも含まれる。実務研究論文はプロセスが大切である。実務者の現場にはまだデータは出ていない。データを待ってたらそもそも遅い。プロセスが重要である。プロセス・過程を重視した実務研究論文はありえる。学術研究論文と実務研究論文の違いは、理論化するのか、実用化するのかの違いでもある。最終的なアウトプットが違うのだ。WHYかHOWか。理論をどうやって実用化するのか。実用化をメインとした実務研究がこれから大切な時代になる。

実務研究論文の書き方教科書  西川洋行 https://zofrex.co.jp/nishikawa.pdf

すいません!たくさん質問あります

「実務研究論文」は、ある実践についてその実践に関わった当事者によるものと限定されますでしょうか?あるいは、ある実践について、第三者である部外者(観察者)が、結果を重視してWhyの解明を目的とする学術的アプローチではなく、プロセスを重視してHowを見いだして活かそうとする「実務家的目線」でアプローチしたものも含まれますでしょうか?

私自身も行政・政策担当者ではなく、コンサルタントや学識経験者などとしてのかかわりが多いので。そのことに関連して、「著作権」「知的財産」のところで、政策担当者とともに、一緒に考えて編み出したアイデアや方法の実践研究について論文をまとめるとなると、その点のオリジナリティはどのように整理したらよろしいでしょうか。

他の成功事例を探して、どんどん現場の評価ができなくなり、沼にはまった経験があります。

現在絶滅に瀕している地域の文化・芸術的なものを発掘して、それを取り敢えず市内レベルで広め、最終的には全国レベルに広めるようなことを目的としている課題があるのですが、このような事例も対象になりますか?

語るテーマは一つに絞らないといけませんか。一活動で次々に問題が発生し、それを一つ一つ解決してきました。また、テーマ一つでは10頁を埋められません。論文の「おわりに」で、実務論文でも先行研究を持ってきて、要約や課題を語ることは必要ですか。

 

地域活性学会のサポート体制、スゴすぎです!

なんと!今回は学会誌編集委員の西川洋行先生が、新設された「実務研究論文(査読あり)」とこれまでの学術研究論文とのちがいや査読のポイントなどを、図表を用いながら微に入り細に入り徹底解説(「研究ノート」に加えて「事例報告」も〝査読あり〟とのこと)。学会ホームページにある【「地域活性研究」誌 査読審査ガイドライン】の詳細な解説にもなっていて、地域活性学会が求めているもの、目指している方向性がよくわかって大変参考になりました。

本日の内容を無理を承知でひとことで要約すると、学術論文は結果(データ)重視で「Why?」の解明が目的であるのに対して、実務論文は過程(プロセス)重視で「How?」を見いだして現実的・実践的・具体的に地域活性化につなげる次の一手、暗黙知(経験知)の共有!

質疑応答の時間も含めて先生方の貴重なお話とサジェスチョンの数々、ありがとうございました。(諸先生方が論文作成の相談にのってくれるサポートスクエアも新設されたとのことで、地域活性学会のサポート体制、スゴすぎです!)

前回に引き続き、本日も大変勉強になりました。特に、学術論文と実務論文の違い、査読時にポイントとなる点、先行研究のレビューの考え方等、とても参考になりました。ありがとうございました。3回目も心待ちにしています。

西川先生の講義と質問への的確な回答、勉強させていただきました。永松先生のお話も良かったです。斉藤先生の進行も流石でした。

今更聞けない、でもわかっていない

先行研究でなく先行事例をまとめることに、実務論文の新しさと特徴を感じました。西川先生、論理的に実務論文の書き方を説明いただき深く感謝しております。西川先生のご説明が、これまで聞いたどの説明よりもわかりやすく、感動いたしました。大変貴重な、ありがたい機会でした。そもそも「学術論文って何?」ということから学術論文の研究ノートなどとの違いも丁寧に教えてくださり、特に査読の方がどこを見ているのか、どのような点に不満をお持ちなのかもなかなか聞ける機会は私にはないため、大変貴重ででした。地域活性学会はこのような「今更聞けない、でもわかっていない」基本的なことを伝えてくださり、大変ありがたいです。ありがとうございました。

先行研究でつまずいていました

私も先行研究でつまずいていました。書き方も分かりませんでした。永松先生の講義を聞いて、お示しくださった論文構成の中に素直に頭の中にあったもやもやを吐き出しました。とにかく、書いてみました。それから直そう。と割り切って書きました。一本書いてみると、もう一本書きたくなりました。一本目よりニ本目の方が論文っぽく書いているなぁと感じます。書くことで、自分の好きな分野が見えてきました。今日、西川先生の講義を聞いて、実務論文が現場の皆さんに役に立てるようなものになるように、学術分野に少しでも貢献できるように書き直したいと思います。少しずつですが、成長している自分にワクワクします。余談ですが、公務員を長くしていると、自分のやりたいことがぼんやりしてきます。異動先で、与えられたことをうまくこなす術を身につけてしまいます。松永先生がおっしゃったとおり、「公務員は補助事業が”成果がありました”と言う文章はいくらでも書ける」んです。でも、博士ってその道の専門家になるわけですから、小手先で流すやりかたではいけないと今更ながら気づきました。好きな分野をみつけて、とことん浸って、その周りのこともいろいろ知っていく三年間ですね。今日の講義を聞いて、市役所を辞めたことは良かったと感じました。市役所の人は、市役所から外へ情報は出しません。個人の意見はもっとだしません。だから、学会の先生方がおっしゃるように、個の暗黙知になって葬られてしまいます。コンサルや民間の地域づくりのノウハウは世の中にたくさんあります。これからは、公務員もノウハウを残し共有する必要があります。本当にありがとうございます。感謝してもしきれません。

もっと早くこのような指導を受けたかった

「もっと早くこのような指導を受けたかった」「諦めかけた学位へ再挑戦する決意が出来るかも」と感じました。大学は大学へ行けなかった人の為のものとの言葉もありますが、社会貢献できる学位は実務者しか完成できないとの思いを強く致しました。

満足そうな御園会長

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