【速報】島根県浜田市久保田章市市長(学会副会長)がマニフェスト大賞優秀賞受賞

第18回マニフェスト大賞<首長の部>で、地域活性学会副会長で島根県浜田市長の久保田章市氏が優秀賞(5名中の一人、平均倍率77.2倍)を受賞されました。テーマは課題解決に挑戦する市職員と地域を担う人材の育成です。おめでとうございます。

島根県浜田市久保田章市市長(学会副会長)

1.課題解決に挑戦する市職員の育成

(1)「施策ミーティング」で職員とアイデア協議

育成の仕組みの一つは、「施策ミーティング」の実施です。地方自治体で取り組まれる施策の多くは、担当部署の係長以下の職員が立案する「ボトムアップ」型です。しかし、施策の立案には、多くのハードルがあります。施策の有効性は? 事業の仕組みは? 法的問題はないか? 事業費は? 国の財政支援は? など、多くの詰めるべき点があります。せっかく職員(係長以下)が施策を考えても、課長や部長から「ストップ」がかかったり、「ボツ」になることもあります。こうしたことが続くと、職員は「施策を考えよう」という意欲が低下し、ひいては自治体の施策立案力低下につながります。そこで当市では、市長から職員に対して、「生煮えでも結構。どんどん施策を持ち込んで」と呼びかけ、市長を交えた「施策ミーティング」を頻繁に行っています。場所は、市長室の「長テーブル」で、そばにホワイトボードを設置。説明を聞いた市長が、ホワイトボードを使って、「この点はどうなの?」、「課題は?」などと質問し、「面白い。具体的に詰めて」などの指示を出します。この「施策ミーティング」は、案件の都度(事実上ほぼ毎週)、開催されています。

(2)「ロードマップ会議」で課題協議と進捗管理

仕組みの二つ目は、「ロードマップ会議」での課題協議と進捗管理です。施策のアイデアがあっても、それを実施するまでには、様々な課題を解決しなければなりません。担当職員と幹部職員(市長、副市長、部長など)が一緒に、課題を共有し、解決方法を協議し、あわせて進捗管理を行う「ロードマップ会議」を、毎月、ほぼ2日かけて実施されます。この「ロードマップ会議」によって、職員の施策立案力の向上、施策進捗に対する責任感の醸成、施策達成によるモチベーションのアップなどの効果もあり、職員教育にも役立っています。

(職員提案から事業化に至った事例)

事例1「シングルペアレント介護人材誘致」

事例2「移動期日前投票車の導入」

事例3「全国の『浜田さん』を関係人口に」

事例4「若手音楽家の誘致」

2.地域を担う人材の育成

(1)島根県立大学に地域系学部設置の働きかけ

浜田市には、島根県立大学(2000年開学)がありますが、総合政策学部の一学部だけでした。地域が持続的に発展するためには、地域課題を考え、地域で活躍する人材の育成が不可欠と考え、島根県西部の9市町の首長に呼びかけ、2014年8月に島根県立大学支援協議会(島根県西部の自治体等で構成。会長浜田市長)から、地域系学部の設置要望を行いました。2016年6月に「設置困難」と回答がありましたが、2017年8月に再度、要望を行いました。その後、設置の準備が進み、2021年4月、新学部が設置されました。

[従来] 総合政策学部(募集定員230名)、[2021年4月より] 国際関係学部(90名)、地域政策学部(140名)「地域政策学部」が設置されたことにより、地域問題等を研究する教員が採用され、「将来、地域に貢献したい」という学生が多く入学しているそうです。

(2)「地域経営論」を担当し、地域活性化の講義

私は前職が大学教員(経営学、地域経済学)であることから、新たに誕生した地域政策学部において、「地域経営論」(15コマ、2単位)を担当。地域活性化について、首長の経験を踏まえた実践的な講義を行い、将来、地域で活躍する人材育成のお手伝いをしています。

受賞メッセージ

今、地方自治体は、人口減少、少子高齢化、地方経済の低迷など、様々な課題を抱えています。こうした難しい課題に対応するためには、施策を立案する市職員の施策立案力の向上が求められます。職員の施策立案力向上は首長の役割と考え、私自ら職員と一緒に施策立案に取り組んでいます。また、島根県は人口減少、過疎化などの「課題先進県」です。地域のことを学び、地域を担う人材を育成するため、浜田市にある島根県立大学に対して、「地域系学部」の設置を働きかけ、私自身、地域活性化の講義を担当しています。引き続き、様々な地域課題の解決に挑戦する市職員の施策立案力の向上に取り組むとともに、島根県立大学と連携しながら、地域で学び地域を担う人材の育成を図ってまいります。