「こども未来戦略」~ 次元の異なる少子化対策の実現に向けて ~令和5年12月22日
Ⅰ.こども・子育て政策の基本的考え方~「日本のラストチャンス」2030年に向けて~
我が国は人口の3分の1を失うおそれがある
○ 2022年に生まれたこどもの数は 77万759人となり、統計を開始した 1899年以来、最低の数字となった。1949 年に生まれたこどもの数は約 270 万人だったことを考えると、こどもの数はピークの3分の1以下にまで減少した。また、2022年の合計特殊出生率は、1.26 と過去最低となっている。
○ しかも、最近、少子化のスピードが加速している。出生数が初めて 100万人を割り込んだのは 2016年だったが、2019年に 90万人、2022年に 80 万人を割り込んだ。このトレンドが続けば、2060年近くには 50万人を割り込んでしまうことが予想されている。
○ そして、少子化は、人口減少を加速化させている。2022 年には 80 万人の自然減となった。今後も、100万人の大都市が毎年1つ消滅するようなスピードで人口減少が進む。現在、日本の総人口は1億 2,500万人だが、このままでは、2050年代に1億人、2060年代に9千万人を割り込み、2070年に 8,700万人程度になる。わずか50年で、我が国は人口の3分の1を失うおそれがある。
国全体の経済規模の拡大は難しくなる
○ こうした急速な少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、我が国の経済・社会システムを維持することは難しく、世界第3位の経済大国という、我が国の立ち位置にも大きな影響を及ぼす。人口減少が続けば、労働生産性が上昇しても、国全体の経済規模の拡大は難しくなるからである。今後、インド、インドネシア、ブラジルといった国の経済発展が続き、これらの国に追い抜かれ続ければ、我が国は国際社会における存在感を失うおそれがある。
○ 若年人口が急激に減少1する 2030年代に入るまでが、こうした状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であり、2030年までに少子化トレンドを反転できなければ、我が国は、こうした人口減少を食い止められなくなり、持続的な経済成長の達成も困難となる。2030年までがラストチャンスであり、我が国の持てる力を総動員し、少子化対策と経済成長実現に不退転の決意で取り組まなければならない。
○ 今回の少子化対策で特に重視しているのは、若者・子育て世代の所得を伸ばさない限り、少子化を反転させることはできないことを明確に打ち出した点にある。もとより、結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであって、これらについての多様な価値観・考え方が尊重されるべきであることは大前提である。その上で、若い世代の誰もが、結婚や、こどもを生み、育てたいとの希望がかなえられるよう、将来に明るい希望をもてる社会を作らない限り、少子化トレンドの反転はかなわない。個人の幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させること、これが少子化対策の目指すべき基本的方向である。
○ このため、政府として、若者・子育て世代の所得向上に全力で取り組む。新しい資本主義の下、賃上げを含む人への投資と新たな官民連携による投資の促進を進めてきており、既に、本年の賃上げ水準は過去 30年間で最も高い水準となっているほか、半導体、蓄電池、再生可能エネルギー、観光分野等において国内投資が活性化してきている。まずは、こうした取組を加速化することで、安定的な経済成長の実現に先行して取り組む。その中で、経済成長の果実が若者・子育て世代にもしっかり分配されるよう、最低賃金の引上げや三位一体の労働市場改革を通じて、物価高に打ち勝つ持続的で構造的な賃上げを実現する。
2030年までがラストチャンスである
○ 次元の異なる少子化対策としては、(1)構造的賃上げ等と併せて経済的支援を充実させ、若い世代の所得を増やすこと、(2)社会全体の構造や意識を変えること、(3)全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること、の3つを基本理念として抜本的に政策を強化する。
○ このように抜本的に政策を強化することにより、こども一人当たりの家族関係支出で見て、我が国のこども・子育て関係予算(GDP 比で 11.0%)は、OECDトップ水準のスウェーデン(15.4%)に達する水準(一定の前提を置いて試算すると 16%程度)となり、画期的に前進する。
○ こうした若者・子育て世代の所得向上と、次元の異なる少子化対策を、言わば「車の両輪」として進めていくことが重要であり、少子化対策の財源を確保するために、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがあってはならない。
○ 少子化対策の財源は、まずは徹底した歳出改革等によって確保することを原則とする。その際、歳出改革等は、国民の理解を得ながら、複数年をかけて進めていく。
○ このため、経済成長の実現に先行して取り組みながら、歳出改革の積上げ等を待つことなく、2030年の節目に遅れることのないように、前倒しで速やかに少子化対策を実施することとし、その間の財源不足は必要に応じてこども・子育て支援特例公債を発行する。
○ 経済を成長させ、国民の所得が向上することで、経済基盤及び財源基盤を確固たるものとするとともに、歳出改革等による公費節減と社会保険負担軽減の効果を活用することによって、実質的な負担が生じることなく、少子化対策を進める。少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない。
○ 繰り返しになるが、我が国にとって 2030年までがラストチャンスである。全ての世代の国民一人一人の理解と協力を得ながら、次元の異なる少子化対策を推進する。これにより、若い世代が希望どおり結婚し、希望する誰もがこどもを持ち、安心して子育てができる社会、こどもたちがいかなる環境、家庭状況にあっても、分け隔てなく大切にされ、育まれ、笑顔で暮らせる社会の実現を図る。
共働き・共育てを推進していく
○ この「こども未来戦略」(以下「戦略」という。)では以上の基本的考え方に基づき、これまでにない規模で、全てのこども・子育て世帯を対象にライフステージ全体を俯瞰して、切れ目ない子育て支援の充実を図るとともに、共働き・共育てを推進していくための総合的な対策を推進していく。
○ そのためには、制度や施策を策定・実施するだけでなく、その意義や目指す姿を国民一人一人に分かりやすいメッセージで伝えるとともに、施策が社会や職場で活用され、こども・子育て世帯にしっかりと届くよう、企業、地域社会、高齢者や独身者も含め、社会全体でこども・子育て世帯を応援するという気運を高めていく国民運動が必要であり、こうした社会の意識改革を車の両輪として進めていく。
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