博士のキャリアパス

人文科学・社会科学系における大学院教育改革の方向性中間とりまとめ~ 自主的な「問い」の尊重と教育課程として果たすべき責任の両立に向けて ~令和4年8月3日 中央教育審議会大学分科会大学院部会資料を抜き書きします。斉藤は博士課程に入学する前にいったん社会に出て、問題意識を持ってから入学すべき。博士号取得者は博士論文をベースに起業だと思うのですが。また実務家研究者というくくりがないですね。ここが研究成果をしっかり社会に着地させることで博士号取得者の社会的認知は進むと思いますがいかがでしょうか。

社会経済活動は、機能的価値から意味的価値を重視する時代へ

SDGs各目標の市場規模70兆~800兆円程度、2020年のESG投資総額約4,000兆円、エシカル(倫理)消費の意識は若い世代で高い。こうした中、価値発⾒・価値創造的な視座を提供する⼈⽂科学・社会科学分野に高い期待が寄せられている。アカデミア内外の垣根を越え、産業界をはじめとしたあらゆるセクターにおいて、こうした期待に応え・活躍する人文科学・社会科学系の高度人材を育成する必要がある。

国際比較において、我が国は人口比や企業経営者に占める修士号・博士号取得者の数が少なく、その差は人文科学・社会科学系において特に顕著

【博士課程】大学教員を志す者が多い中、標準修業年限を逸脱しながらもキャリアパスの展望が描けないといった課程そのものに関する内面的課題の改善が必要。小規模専攻でも効果的な研究指導が行われるよう、組織の大くくり化や研究指導委託等を活用し、アカデミア内外を跨いだ教育研究を拡大することで、指導教員と研究テーマのマッチングによる学位取得の円滑化を図るとともに、産業界・大学院間での中長期的な共同研究を推進。アカデミックポストの採用基準や要件、必要な業績等を可視化、早期見極めの実施等によるキャリア開拓の予見性の向上及び教員としての指導力の養成。専攻や就職先を問わず、人文科学・社会科学系の博士課程で身につく普遍的なスキル・リテラシーの明確化及び養成。

総合知

我が国では人口あたりの修士・博士号取得者が諸外国に比して少なく、日米の経営者層の最終学歴を比較しても、人的資本の高度化に向けて大学院卒人材の輩出及び社会での活躍強化は喫緊の課題。人口あたりの学位取得者を分野別に見ると、修士・博士号取得者の差は人文科学・社会科学系の修士号・博士号取得者の差によるところが大きい。一方、我が国における人文科学・社会科学系の大学院修了者の就職率は低く、キャリアパスが十分に開かれているとは言えない状況にある。こうした中、「科学技術・イノベーション基本計画」等において人文科学・社会科学系も含めた「総合知」の考え方が打ち出され、総合知も踏まえた人文科学・社会科学系の大学院教育改革を通じた人材育成の促進策について、その方向性を定めるとされている。

「科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26日閣議決定)」(抜粋)人文・社会科学の知と自然科学の知の融合による人間や社会の総合的理解と課題解決に貢献する「総合知」に関して、基本的な考え方や、戦略的に推進する方策について2021年度中に取りまとめる。あわせて、人文・社会科学や総合知に関連する指標について2022年度までに検討を行い、2023年度以降モニタリングを実施する。【科技、文】上述の「総合知」に関する方策も踏まえ、社会のニーズに沿ったキャリアパスの開拓を進めつつ、大学院教育改革を通じた人文・社会科学系の人材育成の促進策を検討し、2022年度までに、その方向性を定める。【科技、文】

大学教員等へのキャリアパスについて

人文科学・社会科学分野の博士後期学生の多くが大学教員を志望するなか、標準修業年限の超過率が極めて高いことは、本人のキャリアパスにどのような影響を及ぼしえるのか。修了者の博士後期課程の在籍年数と大学教員等としての雇用形態の関係性を分析したところ、人文科学分野では、標準修業年限の超過年数に伴い大学等での雇用が微増するが、大学における非正規(任期付き)雇用の割合が高まる、人文科学分野で大学に就職した者の多くは非常勤講師であり、その大半が博士後期課程に6年以上在籍した者。対照的に、専任の講師などの比較的安定した職位には、博士後期課程に3~4年在籍した者が多く就いている、社会科学分野では、標準修業年限の超過年数に伴い大学等での雇用は減少する。大学に就職した者は、人文科学分野と同様、標準修業年限の超過年数に伴い非正規(任期付き)雇用の割合が高まる、社会科学分野で大学に就職した者の多くは専任の講師であり、その大半は博士後期課程に3~4年在籍した者等の傾向がある。標準修業年限を大きく超えて博士後期課程に在籍することと、安定した大学教員のポストを得ることには相関性がなく、学生のキャリア形成の観点から標準修業年限の過度な超過は望ましくない。※特に人文科学分野ではキャリアパスが限られていること等より、標準修業年限を超過しても学外での就職者は増えず、大学での不安定な雇用に繋がっていると想定される。なお、こうした在籍年数の長さとポストの獲得との関係性の背景には、成果物による能力評価が困難であり、標準修業年限内に成果を創出することが研究能力やマネジメント能力等の高さとして評価されやすい研究科や研究室に問題により、オーバードクターしやすい環境が生み出されている在籍期間の長期化が学生の経済面・精神面や研究進捗の悪循環をもたらすといった影響があるとの回答が得られている。また、学位授与に加えて教員採用に係る基準も不透明であるため、アカデミアを志向する者にとっての予見性やキャリア選択の判断材料が乏しいとの意見も寄せられている。アカデミックポストへの早期選抜・見極め等による予見性の向上と、これに合わせた対価の伴ったプレFDの実施(研究指導能力の養成)・海外経験の提供、教員採用に関する基準や要件・必要な業績等の可視化、若手教員のポスト拡充等

民間企業等へのキャリアパスについて

「総合知」や意味的価値の創出、SDGsやWell-being、エシカル消費といった昨今の社会的要請に対して、人文科学・社会科学分野の知見や人材を活用することの重要性は高まっており、民間企業等での活躍事例も存在している。一方、経営者・人事担当者をはじめ、未だ社内における人文科学・社会科学分野の院卒人材は少なく、企業等と大学の双方で、未だ修了者の具体的なロールモデルが定着していない。今後の採用意向についても先行き不透明な状況。民間企業において人文科学・社会科学分野の大学院修了者の採用実績がない理由としては、「応募がないから」とする回答が最多となっている等、学生自身がアカデミア以外のキャリアパスに目を向けていない・関心を持っていないことも示唆されている。なお人文科学・社会科学分野の学生や教員からは、今後、大学院修了者の一層の活躍が期待される職種として、公的機関等が挙げられている。院卒の民間等就職者の認識では、人文科学系においては特に、大学院で学んだ専攻の知識や技能よりも、課題設定力や最先端の知へのアクセスといった汎用的な能力のほうが社会で役立つ・評価されるとの意見が多数。具体的なロールモデルが定着していない状況下においては、大学院修了者が「自身のスキルや経験がどのように社会や希望する企業・業界で活かされるのか」を説明できることや、大学院修了者の価値の相互理解に向けた場を学内外で提供する必要。学生と社会の双方に、修士・博士人材の価値や社会的通用性の気づきを与える取組の推進。現代的な社会課題に挑み、新たな価値創出を目指す多方面参画型のPBL教育専門職大学院を含めた大学院におけるリカレント教育の振興。民間企業等におけるロールモデルの収集と周知、大学へのフィードバック等