バックボーンは理系の「人間」への興味

泉谷和昭(三重大学大学院地域イノベーション学研究科西村研究室リサーチフェロー)

理系のソフトウェアエンジニア

理系の大学院(立命館大学大学院理工学研究科、工学修士)を修了して、電機メーカに就職したのが1983年。配属先でパソコンのソフトエンジニアとして働き始めた頃はハッキリと結果の出る機械との対話を大変心地よく感じていました。

 syntax error!

このエラーが出ると、一瞬、機械を疑ってみますが、結局自分のミスに帰結するという割り切れる状況がある意味心地よかったのかもしれません。

商品企画業務と「消費者、人間」への興味

エンジニアとしての才能は無かったと見えて、後に民生用パソコンの商品企画部門に異動となり、企画業務の現場を仕切ることになります。さて、この世界、機械の世界とは打って変わって掴みどころがなく、五里霧中の中を彷徨する感、満載というところでしょうか?一般消費者の方々というのは明確な顔が見えず、暗闇に向けて石を投げては微かに聞こえる「コツン」という音を頼りに意思決定するという、「syntax error」とは全く異なった反応と格闘していました。当然、商売が絡むのでこちらも割り切れないことばかりと理系人間としては、「こりゃ社会の関係性や人間についてもっと知らなきゃ」と思いだし、遅まきながら50代の始めに放送大学の修士課程に入学して、主として人間の一見不合理と思える特性を取り扱う分野に焦点を当て、学び始めます。

高齢海外赴任

入社以来、国内市場を中心に歩んできた経歴からは考えられない辞令を受けることに成ります。米国のシリコンバレーにある情報通信関連事業の事務所への赴任です。50代も半ばのおじさんが、英語が得意でもないのに初めての海外赴任の辞令を受けるというのは、結構異例なことでした。当人のストレスは相当なものです。しかし、「人間万事塞翁が馬」、結局の4年半、現地で暮らし、会社員人生の収支をプラスに出来る貴重な経験を積ませて頂きました。

金門橋を渡る、シリコンバレーはサンフランシスコ湾の南、ベイエリアのテクノロジー/イノベーションに関する一大集積地

定年退職と博士後期課程への進学

帰任するともう定年退職です。人生設計に当たり米国での「感覚」から、ここはひとつ挑戦だと考え、人間の不合理性をより深く研究する為に博士課程への進学を決意し、縁あって三重大学大学院地域イノベーション学研究科博士後期課程に入学することが出来ました。同時に同大学の研究員(非常勤)に採用して頂き、三重県紀北町での「相乗り運送実証事業」に参画することが出来ました。

三重大学大学院地域イノベーション学研究科主催の「地域イノベーション学国際ワークショップ(IWRS2019)」での発表

地域活性化が価値ある研究フィールドへ

実証事業でのフィールド活動は非常に楽しく、そうだ!90年代商用インターネット揺籃期にはやった意味でのスローガン「Think globally Act locally」を実践することが地域創生につながるはず、その中でボランティアや参加者に対するインセンティブ設計というテーマは、私の興味の基本である「人間の不合理性」とも密接に関連するはずだと思うに至りました。そして、博士後期課程を修了し学位(学術)を授与して頂きました。以来、石材研磨材料の会社に籍を置きながら、三重大学大学院地域イノベーション学研究科西村研究室のリサーチフェロー、また今後期は大阪国際工科専門職大学で一教科を担当(非常勤講師)しながら、研究活動を続けているというところです。

地域活性学会研究大会での発表

 

Writer:泉谷和昭(いずたに)(三重大学大学院地域イノベーション学研究科西村研究室リサーチフェロー)