離島で公務員として働きながら長崎県立大学大学院で学ぶ

山下大輔

離島は日本の縮図

長崎県五島市にある奈留島という小さな島が私の出身地です。奈留島は、中型まき網漁業と一本釣漁業、養殖漁業を主体とする水産業を基幹産業とし、島内には、2016年に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産である江上天主堂(江上集落)や、2022年に日本ジオパークに認定された複数のジオサイトがあり、また、歌手である荒井(現・松任谷)由実さんの名曲「瞳を閉じて」誕生の舞台となった奈留高校などがある文化や自然が豊かな島です。しかし、他の離島地域と同じように、基幹産業の衰退などにより島の人口は急激に減っています。日本は2008年をピークに人口減少の時代を迎えましたが、奈留島はその50年前の1960年の9,268人をピークとして人口の減少が始まり、現在は2,000人を下回り、ピーク時の約2割となっています。

多種多様な出会い

現在、私は五島市役所に勤務しながら、長崎県立大学大学院の地域創生研究科に所属しています。市役所では、市政に関する総合的な企画や調整などを行なう部署で離島振興や過疎対策などを担当し、その後、出身地の奈留島にある奈留支所において、より住民に近い立ち位置で、「地域振興」や「まちづくり」というある意味便利な言葉の下で、コミュニティ施策や産業の振興、教育プログラムの企画などを幅広く担当させていただきました。また、業務以外の時間を利用して、若い世代を中心とした任意団体やNPO法人に所属し、様々な職業の方々とともにイベントの企画・運営や、環境保全などの地域活動を行っています。その中で、住民の皆さんはもちろん、地域おこし協力隊や全国各地で地域づくりに取り組む方々、同じ離島地域で活動するコンサルタントなどの専門家、研究で島を訪れる大学の先生方や学生たち、そして、市内に移住して起業を目指す方々など、さまざま専門性を持った人々と知り合い、助言をいただきながら一緒に地域課題の解決に向けて活動してきました。その中で、行政職員としての通常業務だけでは得ることが難しい専門性を身に着け、その専門性を活かした地域づくりを実践することへの想いが強くなり、大学院へ進学することを決めました。また、奈留島の小中学校と高校で取り組んでいる「しま留学(離島留学)」に携わり、「教育」を地域活性化のツールとして取り組んだことで、教育のあり方や関わり方を見直し、自分自身の学び直しについて考えるきっかけとなりました。

人と人、島と島のつながり

私は今、島嶼間の関係性について研究しています。五島市を含め離島地域の行政は、島の維持・活性化を目的として多くの施策を実施しています。ですが、そのほとんどは、都市部を中心とした本土地域をターゲットとしており、周辺の離島、特に二次離島と呼ばれる小離島や行政区が異なる離島への意識は低いように感じていました。それは、当然のこととも言えますが、今後さらに離島地域の人口が減り、コミュニティが弱体化していく中においては、周辺離島への依存や補完といった関係性が重要となっていくのではなかと考えています。産業を通じた事例を挙げると、昭和20年代、五島近海でイワシ漁が盛んだった時期に、奈留島にあった煮干しの加工場へ、行政区は異なるが海を隔てて隣接している若松島から労働に来ていた人が多くいて、当時は、この労働をきっかけとした婚姻関係も見られたということですが、当該水産業の廃退にともない、現在ではかつての交流や関係性はほとんどなくなっています。こういった周辺離島との関係性を、ネットワーク理論や社会関係資本の観点から研究し、離島地域が持続していくためのあり方を“離島型コミュニティ”として提唱できればと考えています。現在、学内や学会などで報告する機会をいただく中で、様々なご意見をいただきながら研究の方向性をまだまだ模索中ですが、将来的には、離島行政職員として、離島住民として研究の成果を業務や地域の活動に生かしていきたいと思います。

Writer:山下大輔