日本農業新聞で「役所のしくみ」(日経プレミアムシリーズ)の書評を書かさせていただきました。本日掲載です。久保田市長は銀行に在籍中に大学院修士、博士課程前期で学び、銀行のシンクタンクの執行役員に異動。法政大学教授への就任。その後、ふるさと島根県浜田市長への政治家としての転身とずっと成長されてきたことを書きました。同書籍は初版印刷は5,000部でした。日経プレミアムシリーズは、近年の本離れの中で、通常、初版印刷は4,000部だそうですが、直前の社内会議で、5,000部が決まったそうです。ところが、発売開始2、3日で、書店からの追加注文が相次ぎ、2,000部の増刷が決まりました(累計7,000冊)。結局、現在は5刷が印刷されており、累計印刷冊数は14,000部になったそうです。久保田章市氏のキャリアの積み重ねが興味深く、役所を見る視点も誠に新鮮であることがヒットの要因だと思います(斉藤)。
役所のしくみ 地域活性化センターシニアフェロー斉藤俊幸
島根県浜田市長の久保田章市氏が「役所のしくみ」(日経プレミアシリーズ)を出版した。本書は公務員の職務、地方自治体の構造、首長(くびちょう)と議会の関係などを市長ならではの視点で、そこで起きた出来事と根拠となる憲法や地方自治法を照らし合わせながら具体的に説明している。
東京目線で恐縮だが浜田市は東京から飛行機に乗り萩石見空港に降り立つとそこから小型バスで1時間はかかる。東京23区より広い市域を有している過疎地域であり、ポツンと一軒家のような自治体である。久保田氏は浜田市に生まれた。東京の大学に進学し、その後大手銀行に就職するものの銀行在職中に大学院修士課程で学び、銀行のシンクタンク部門在職中には博士課程で学び続けてきた。いわば研究者としての王道を歩き、法政大学教授へと転身する。久保田氏はそのままいれば研究者としても大学教員としても大きな成功を得られたと思うが、ふるさと浜田市へのUターンを決意する。市長選挙に立候補するためだ。いざ市長になってみると役所の中は驚きの連続で、研究者として市長として注意深くそのしくみを考察しリーダーとして判断する様子が本書に率直に描かれている。
評者は著作の中に出てくる「議会軽視」に着目した。市長に就任間もないころに地元紙の記者に廊下で質問され「今度の議会に提案するつもり」と答えたところ翌日の新聞に「浜田市、〇〇の方針固める」との記事が掲載され、「議会に説明がない」と紛糾した話を書いている。「議会軽視」という言葉を、身をもって理解する姿が書かれており微笑ましい。この他にも議会の「チェック機能」「選挙のしこりが残る」などわかりやすく書いてある。
この本は我々が知っているようで知らない役所のしくみが具体的に説明してあることが実に面白い。市長に向かって面白いとは失礼な言い方ではあるがテレビや映画の台本の素材に使えると思う。それだけ大学教授が首長として成長する様子が初々しく映るのだ。そして首長は地域住民、職員、議員に対する愛情があればこそ成長できることを教えてくれる。一読をお勧めする。

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