福田良輔
なぜ長男が残れなくなったのか
なぜ日本は地域の著しい衰退をほんの数十年間の中で生じてしまったのでしょうか。他の先進国、例えばドイツでは今でも地域の衰退は生じていないのではないしょうか。なぜ、地域の衰退と食糧自給率は同根で生ずるのでしょうか。日本の食糧自給率が38%であるのに対して、ドイツでは90%以上の自給率が確保できています。その理由はどこにあるのでしょうか。各国の農業と食糧自給率向上政策とは異なる日本固有の理由を明らかにしたいです。その際、なぜ何百年も住み続けてきた家の長男が残れなくなったのかを明らかにしたいです。私が見る限り、長男の流出が地域衰退の最大の原因です。この辺につきましても、地元民や正に都会人となった長男等の実情をしっかり調査したいです。
ドイツのシュタットベルケのPPPをお手本にして
日本の中山間地域は、江戸時代も含めて農林業で成立していたのに、戦後1964年に行われた木材の輸入自由化で、日本の7割を越える山林、中でも広葉樹も取り扱うべき林業がほぼ滅亡してしまいました。つまり、収入源が”農業only”になってしまい、後継者が経済的理由により、地域に残りにくくなってしまったのです。地域の資源・資産は、太陽と空気と水と土地です。長期にわたる経済的な資産活用の需要が変わり、林山材の循環活用が困難になってきているのです。それならば、林作の補完的な資源活用として「電作」(地域における再生可能エネルギー発電)の小容量・分散・多数配置型 木質バイオマス発電を地域に立ち上げて、戦後70年以上手入れ無しで無価値の里山雑木広葉樹を活用しながら、農業も立ち上げましょう。願わくならば、ドイツのシュタットベルケのPPP(官民連携事業)をお手本にして。この「太陽光発電+広葉樹の木質バイオマス発電のPPP体制」を、日本の再生可能エネルギー発電の一つのカテゴリーとして公認し、規則と財政支援も加えて、中山間地域の復興政策にまで高めてゆきましょう。
林業を展開する若者は殆どいません
なぜ日本の木質バイオマス発電用燃料資源は、90%以上を輸入しているのでしょうか?ドイツは、PPPのシュタットベルケ中心で、計画的に広葉樹を植えて、木材製品に使うのみならず、需要の多い木質バイオマス発電に、国産資源として活用しています。それもあって、ドイツでは、林業が100万人の雇用を創出する産業になっています。日本が、戦後今日に至るまで、森林組合を通して、何十兆円かを使って育成・維持してきているのは、人工針葉樹林のみです。それですら喜んで相続し、林業を展開する若者は殆どいません。針葉樹は植林した上で、二度間伐しないとよく育ちません。間伐残材の需要も減ってきたので、政府は、木質バイオマス発電に使う政策を立ち上げて、それを今でも維持しています。その根拠が、木材の発熱量は、樹種によらず約4kcal/kgでした。しかし、本当に山に入って木材を取り扱う時、誰がkgで取り扱うのでしょうか。全て、伐採から山出し、保管や運搬、或いはチップ化や燃焼までも㎥単位で扱います。すると、針葉樹の比重が0.3台であるのに広葉樹は0.6~1.0台ですから、針葉樹材は、経済性の観点から、木質バイオマス発電の熱源として選ぶことはないのです。だから比重の高いヤシ殻や南洋広葉樹材を輸入し、それが大手商社の一大事業にもなっているので、政府・与党は、ドイツ並みの国産材活用のルールも支援もしないのです。大容量発電でないと、木質バイオマス発電だけでは経済性が成立しません。従って、新たな日本版シュタットベルケが必要になってきます。
日本版シュタットベルケをどう確立してゆくか
日本の最大級発電所であったM市の発電所では、生木ですと一日10トントラック約100台分の木材が必要です。これは、地域木材のみでは供給が困難になることを意味します。軽四か4トントラックで済む、生木で20トン/日の、正にドイツが主採用している200~250kW級発電所の分散多数配置型こそが、目標です。日本版シュタットベルケをどう確立してゆくのかが、地域を復興させてゆくための課題です。日本の7割が山林で、その半分以上が手付かずの広葉樹林で、今や量は確実なのに、荒れ切って価値ゼロである森林資源の活用を図りましょう。その場合、40万ヘクタールを越す放棄田畑と未利用林野、更には無活用の里山雑木広葉樹のドッキング活用に着目しましょう。無人運転可能で利益の出る太陽光発電に、若者の雇用は作るが経済的な自立が困難な小容量木質バイオマス発電を組み合わせて一つのカテゴリーとして確立し、経済性も成立させながら地域資源の活用による地域の自立とひいては日本国家のクリーン自立エネルギーの促進を、日本版シュタットベルケで立ち上げてゆきましょう。
writer:福田(旧姓畑)良輔(工学博士、元中部大学客員教授、元住友電工常務執行役員、みさきエコエネルギー株式会社代表取締役)