【出版】《農都共生ライフ》がひとを変え、地域を変える

林美香子(地域活性学会理事)

慶應義塾大学大学院SDM研究所顧問で地域活性学会理事の林美香子です。札幌で、「農村と都市の共生=農都共生」をテーマに研究、取材、実践活動をしています。このほど、今までの取材や活動内容をまとめた5年ぶりの新刊を札幌の寿郎社から出版しましたので、ご紹介させて頂きます。まずは簡単な自己紹介を。札幌生まれで、北海道大学農学部卒業後、札幌テレビ放送アナウンサーを経て、フリーのキャスターとして農業・農村の取材や地域づくり関連の仕事を続けています。また仕事をしながら、北海道大学工学部社会人博士課程で「農村と都市の共生による地域づくりの研究」により博士号を取得。2008年から2020年まで、札幌在住のまま、慶應義塾大学大学院SDM研究科特任教授をつとめ、農業・農村をテーマにしたアグリゼミを担当しました。

新刊のタイトルは

新刊のタイトルは、林美香子編著『《農都共生ライフ》がひとを変え、地域を変える 移住・CSA・ローカルベンチャー――〈ウェルビーイングな暮らし〉の実践』(寿郎社刊)です。

力を込めて書きました

コロナ禍で地方での活動が見直される今、農村への移住やCSA(地域で支える農業)の実際、田舎で稼ぐローカルベンチャーの成功例などを網羅した〈新しい暮らし方〉指南の本です。とても長~いタイトルですが、農村でのウェルビーイングな暮らしの素晴らしさと、その実践のすすめについて力を込めて書きました。農村と都市は対立するのではなく、農村と都市の交流・対流・連携など共生による、経済の循環・人材の循環・情報の循環が大切と考えています。私が第1章と3章で農都共生による地域づくりや農泊などについて、慶應SDMアグリゼミの修了生で奈良県立大学准教授・地域活性学会理事の村瀬博昭さんが、第2章と3章で専門であるCSAや地域づくりの事例を担当しています。地域活性関係者の方であれば、目次を見ると本の内容をイメージできると思うので、かいつまんでご紹介します。

第1章 「農都共生」とは何か

ウェルビーイングな暮らしのヒント

「グリーンツーリズム」の始まり

「農泊」というコミュニティビジネス

「農村と都市の共生による地域再生の基盤条件の研究」(ダイジェスト)など

第2章 CSAによる農村と都市の共生

CSAの誕生と歴史

日本のCSAのフロンティア――北海道「メノビレッジ長沼」の取り組み

CSAの先進事例――ファーム伊達家(札幌市)、ビオクリエイターズ(神戸市)、井原山田縁プロジェクト(糸島市)

CSAはエシカル消費をはじめとする社会貢献や環境保全を意識した消費をもたらす

日本におけるCSAの展望など

第3章 農都共生の国内外の実践事例

「農業・農村の有する多面的機能」と「田園回帰」

[農泊事例]北海道鶴居村のオーベルジュ

[新規就農事例]北海道鷹栖町の元・やり手営業マンの米づくり

[学生活動事例]学生が運営する奈良県御杖村の食材を用いた産直レストラン

[ICT活用事例]課題を解決するスマート農業

[温泉宿事例]温泉宿における「食の魅力」の新たな方向性

[移住・定住事例]移住・定住による地域活性化のための全国の取り組み

[農村女性の活躍事例]北海道千歳市のファームレストラン「花茶」

[海外編]として、フランス、イタリア、スペインの紹介

[最後に]生産者と消費者を繋ぐ――帯広市の地元小麦を使う「満寿屋パン」

さまざまな実践事例の中で、特に印象に残っているのが、医薬品会社の営業から、鷹栖に移住して農家に転身し、大活躍している平林さん。凄い営業力を持ったニュータイプの米農家です。詳しくはぜひこの本で。

第4章 農都共生ライフへ向けて――ウェルビーイングに暮らすための〈提言〉

1 まずはCSAに参加してみよう

2 ローカルベンチャーを起こせ

3 すごい地域を見つける、すごい地域に自分でする

4 どこのまちにもある〝長老モンダイ〟を乗り越える

おわりに――都会の人も農村の人もウェルビーイングに

第4章は、私と村瀬さんの2人で提言しています。ローカルベンチャーでは、北海道厚真町の馬搬(馬による木材などの搬出をする)会社など、環境の面からも評価されるユニークな最新事例を紹介しています。都会の人も農村の人もウェルビーイングな暮らしの実践をして頂きたいという願いを込めた新刊です。より詳しいことはこちらをご覧ください。

寿郎社 北海道札幌市の出版社 https://www.ju-rousha.com/

多くの方たちにお読みいただければと願っています。全国書店での販売のほか、寿郎社のサイトでも販売しています。何卒よろしくお願いいたします。

Writer:林美香子(地域活性学会理事)