地域活性化とヘルスプロモーション

北徹朗(武蔵野美術大学教授) 写真提供:ネオマーケティング株式会社

関東支部・東京(東)支所長を務めさせて頂くことになりました

武蔵野美術大学の北 徹朗と申します。私は2008年に博士(医学)、2010年に経営管理修士(専門職)を取得しました。「ヘルスプロモーション」を標榜し、実験や調査など、様々な手法で「健康に過ごすための環境づくり研究」にチャレンジしています。「環境づくり」と言っても、産業、小売り、施設、消費者、さらには彼らのメンタリティ等々、その範疇はとても広いのですが「地域」に軸足を置いたヘルスプロモーションが重要であるとの思いから、地域活性学会には早い段階から注目していました。2010年の小樽大会(第2回)に非会員として初めて参加し、その後数年経ってから正会員として入会させて頂きました。2020年3月からは総務企画委員、2022年7月からは関東支部東京(東)支所長を務めさせて頂いております。その他、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、日本ゴルフ学会理事・関東支部事務局長なども務めております。

公益社団法人全国大学体育連合70周年記念シンポジウムでの講演(2022年8月21日)

「ゴルフと健康」を考えることは有意義

過去に、国際基督教大学、明治大学、中央大学、電気通信大学など、首都圏の10大学程度でゴルフ授業を担当してきたことがきっかけとなり、ヘルスプロモーションの研究フィールドとして、ゴルフ産業を対象とすることが多くありました。ゴルフ産業は日本のスポーツ市場の中でも最大規模であり、この分野で「健康」を考えることは有意義です。また、ゴルフ授業は全国の多くの大学で行われており、私が代表を務める「一般社団法人大学ゴルフ授業研究会」の調査では、全国の大学のうち約580授業でゴルフが行われ、年間最大10万人程度の大学生が、大学のゴルフ授業を通じてゴルフに初めて触れている、ということがわかりました。この事実は、政財界にもインパクトを与え、2016年6月27日に大学のゴルフ授業を支援することを目的として「公益社団法人全国大学体育連合(安西祐一郎会長)」と「公益社団法人日本プロゴルフ協会(倉本昌弘会長)」、そして経産省の旗振りで組織された「ゴルフ市場活性化委員会(GMAC)(馬場宏之委員長)」の3者連携協定が結ばれました。この調印式の際には、鈴木大地・スポーツ庁初代長官が同席し、私が基調講演を行いました。例えば、日本のゴルフ場数は世界で3番目に多く、全国に約2200ヶ所も存在します。1980年代~1990年代初頭において無理なゴルフ場開発が多数行われたことは反省すべきだと思いますが、現にこれだけ多くのゴルフ場が存在していますので、その資源が有効活用されるための議論がもっとされるべきではないでしょうか。

ゴルフの産学連携調印式での基調講演(2016年6月27日)

「暑さにどう向き合うか」を考えることも地域活性化に通ずる

近年、突発的な猛暑に見舞われる日が多くなり「観測史上最高」という言葉が毎年聞かれるようになりました。この暑さにどう向き合い、健康に過ごして行くかもヘルスプロモーション研究ですし、暑さを和らげる方法や環境を検討することで、地域活性化にも繋がって行くでしょう。例えば、皆さんは帽子や着衣の色や素材に気を遣っているでしょうか。図は小学生の赤白帽の表面温度をサーモカメラで撮影したものですが、暑熱環境下では赤の方が10度以上も暑くなります。同様に、帽子の内側の温度も、赤帽子の方が高くなることがわかっています。逆に言えば、暑熱環境下では、白を身に着けるべきですし、帽子やウエアに限らず、道路や車などのモノにおいても、黒や赤系の濃い色は、熱を吸収しやすく熱を逃がし難くなりますので、暑熱環境下では考慮することが必要です。現在、科研費(研究課題:暑熱環境下において温湿度上昇を抑えることが可能な児童用帽子のデザイン開発,基盤研究C)を取得して、子どもが健康で安全・安心に学び遊べるようになるための、帽子のデザイン開発にチャレンジしています。この研究は、小学校の赤白帽を対象にはしていますが、夏場の観光やスポーツ、地域における様々なアクティビティにおいても、ヒントや波及効果がある地域活性化にも貢献できる研究だと思います。「地域活性研究」は、地域や制度そのものを検証することも重要ですが、それぞれの分野の先生が、自らのフィールドや立場から検討を重ねて行くことで、地域活性化に繋がる何らかの有益な成果が導かれるのではないかと思います。

真夏は赤帽子の方が10度も暑くなる(撮影:武蔵野美術大学 北 徹朗研究室)

暑熱環境研究に関する海外メディアの取材(AP通信,2019年9月11日)

Writer:北 徹朗(武蔵野美術大学教授)