現職公務員にもっと地域活性学会に参画してほしい

今瀬肇、日立のまちを臨む(鈴縫工業㈱執行役員管理本部長)

地方公務員を経て民間人へ

地域活性学会の監事を仰せつかっている今瀬肇と申します。御園会長の勧めで本学会に入会(2014.12月)させていただいてから8年が経過しました。その間、浜田、大村、横浜の各大会などに参加させていただき、その都度多くの方々との出会いを通じていろいろと勉強させていただいています。私は、地方公務員として長く茨城県庁に勤め、企画部長を最後に退職した後、県の外郭団体での勤務を経て、現在は民間人として県内の中小企業で働いています。御園会長には、茨城県総務部長として赴任して来られた時に、その下で県の予算を扱う財政課の仕事でご指導を受け、その後も公私ともに大変お世話になってまいりました。茨城県庁での勤務では、企画部関係の部署が長く、様々な側面から地域振興に取り組んできました。現在は、茨城県日立市に本社のある創業104年の総合建設業である鈴縫工業㈱の管理本部長として、地域の守り手としての地域建設業の発展に少しでも貢献できればと様々な課題に取り組んでいます。

茨城県庁企画部で多くのプロジェクトに参画

茨城県は首都圏30~180キロ圏にあり、太平洋に面した長い海岸線と霞ケ浦や筑波山などの自然に恵まれた県土で、全国有数の農業生産県となっています。一方筑波研究学園都市や東海は最先端の科学技術の拠点であり、日立や鹿島臨海工業地帯には産業技術が集積しています。その茨城県での地方公務員人生を通じて、地域活性化を模索してきました。私が携わってきたテーマをいくつか挙げさせていただくと、平成初期の地域情報化に始まり、東京とつくばを結ぶつくばエクスプレスの沿線まちづくり、科学技術の振興、鹿島臨海工業地帯の活性化、企業誘致など、その戦略づくりと実行でした。その間、筑波大学大学院経営政策科学研究科への派遣研修で勉強をさせていただいたり、科学技術の振興の仕事をしている時には多くの情熱的な大学の先生方との接点を持つことができ、産学官連携の重要性を実感してきました。また、部長時代ですが、県の「まち・ひと・しごと創成総合戦略」の策定を行うとともに、県や県内各市町村の地方創成推進交付金事業の取りまとめを行いました。茨城県北の過疎地域の再生を期して実施した大規模な現代アートの祭典「茨城県北芸術祭」(南條史生総合ディレクター)も成功裏に終えることができました。

晩秋のつくば国際会議場

茨城県北芸術祭の作品例

その後の歩み

県庁退職後、県の出資法人の茨城県科学技術振興財団でつくば国際会議場の管理運営に携わりましたが、この会議場の館長はノーベル賞受賞の江崎玲於奈先生で、筑波研究学園都市における交流の中核施設として、つくばの発展に貢献していこうという先生の熱い思いのもとで仕事ができました。その後茨城県開発公社理事長に就任することになり、工業団地造成や企業誘致、国民宿舎鵜の岬の運営等地域経済の発展に努めました。国民宿舎鵜の岬は海の幸とオーシャンビューが自慢で、ちょうど利用率が30年連続日本一を達成した時で、その後も記録を更新しています。開発公社退任後は、前述のとおり民間企業での仕事にチャレンジすることにし、中小企業の経営の一端を担わせていただきながら、引き続き地域活性化に向けた模索を続けています。

茨城の海岸線

江崎玲於奈博士のブロンズ像と

現職公務員にもっと地域活性学会に参画してほしい

自分の履歴書になってしまいましたが、いろいろな仕事をやってきたものの、実務に邁進しているときは日常の業務に追われて、じっくりと一つのテーマの分析に取り組むことは難しかったのが現実です。しかし、自分で研究できなくても、行政の実務者から見て、現実の課題に対してどういう研究がなされているのか、何か政策立案に役立つ研究成果がないかとか、学会での研究には大きな関心がありました。政策にも過去からの経緯、蓄積があるように、学会の研究体系が明確化してくれば、個々の研究の積み重ねが進み、外からのアクセスとその成果活用も容易になると期待しています。公務員OBの立場で言えば、現職公務員にも役立つ学会となって、現職の方にもっと学会に参画してもらえるようになることを期待したいし、OBの方も入りやすいような仕掛けができればと思います。OBの中にも問題意識が強く研鑽を積みたい人がたくさんいると思うし、そういう方が学会の中で自分のやってきた政策をレビューすることは、新たな政策提言につながることだと考えています。今後もこの学会での新たな出会いと交流に期待するとともに、自分も少しでも学会の発展に貢献できればと思っていますので、引き続きよろしくお願い致します。

Writer:今瀬 肇(鈴縫工業㈱執行役員管理本部長)