地域活性学会への入会のきっかけは小野教授との出会い

上重達夫(カリフォルニア大学バークレー校にて)

日本銀行の上重達夫(うえしげ たつお)と申します。山形大学の小野教授に声をかけて頂き、地域活性学会に入会し、2021年5月の山形県東根大会での「産学金連携コーディネータの秘密」と題する講演のプレゼンターの一人として参加させて頂きました。

微力ながら日本銀行で金融システムの安定に貢献

私は1983年、昭和の良き時代に日本銀行に入行し、バブル期には経済企画庁へ出向し政府経済見通しを作成していました。景気は絶好調、資産価格は右肩上がりで、今とは全く違い如何に実質GNPが巡行速度の4%台を大きく上回らないような見通しを示せるかに悩まされていました。政府内で経済対策を取り纏める部署だったのですが、出向期間にはその必要はありませんでした。しかし、日銀に戻ってから楽をしたツケを払わされることになりました。バブルが崩壊し、金融機関の不倒神話も崩れ、金融不安・危機が発生しました。こうした中で、私は、金融機関に対する考査(立入調査と助言)という仕事を任され、不良債権の洗い出しや適切なリスク管理体制の構築を通じた金融機関の立て直しに微力ながら尽力してきました。考査出張(立入調査)は22年間149回、41都道府県の金融機関を訪れました。小説にも書けないような様々な経験をしましたが、その苦労の甲斐もあって、現在では我が国の金融システムは頑強なものになっています。

日本銀行本店(上)筆者の執務風景(下)

一念発起して東大大学院で学ぶ

日銀では、日本橋本店のほか、神戸・仙台・広島支店を経験しました。広島支店在籍時には、広島大学社会人大学院で半年間非常勤講師を務める機会に恵まれました。講義を始めるのですが、様々な人生経験を持つ多様性に富んだ社会人学生さんは様々な角度から物事をみて議論をする、毎回途中から誰が講師で誰が生徒なのかわからなくなるという経験を経て、自らもいつかは大学院で学んでみたいという衝動に駆られました。そこで、英語を学び直し、専門は全くの独学で受験、2018年に58歳で東京大学大学院に入学し、日銀職員と院生の二刀流で、教育学研究科の大学経営・政策コースで学ぶことになりました。学び直し、リカレント教育です。当初は淘汰の進む金融機関経営の経験を淘汰の兆しがみえる大学経営に活かせないかと考えて専攻を選んだのですが、大学院の授業で、産学連携やスタートアップ起業支援に力を入れているカリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学を訪れる機会があり、産学連携を支える大学と金融機関との連携に興味を持ち、産学連携学会の「学金連携システム研究会」に参加しました。そこで、山形大学の小野教授との出会いがあり、私の修士論文「産学連携を支える『学金連携』の機能と課題」の作成に当り、多大なご協力を頂くことになりました。この論文作成の過程で、多くの大学教員・職員の方にインタビュー調査を行いましたが、皆さん大変協力的で、学問の世界の温かみを感じた次第です。また、日銀時代の同僚で起業した山口省藏氏(金融部会副部会長)とも再会しました。

カリフォルニア大学バークレー校

退職後の新たな挑戦を模索中

2021年に東大大学院修士課程を修了し、現在は日銀に再雇用してもらっている立場にありますが、2年後には退職となります。スタートアップを起業する、地域・福祉へ貢献する、地域創生に参加し研究するなど、その後の挑戦はまだ模索中ですが、地域活性学会の皆さんのお話が大きなヒントになりそうな気がしています。今後ともよろしくお願い致します。

フェイスブック本社前

Writer:上重達夫(日本銀行)