文系博士が20代で起業に至って10年目に抱く想い

千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役 馬上丈司

文学博士が大学発ベンチャーとして起業

私は千葉大学法経学部総合政策学科を卒業後、千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻で学び、地方自治体における再生可能エネルギー政策の研究で博士(公共学)の学位を授与されました。その後、千葉大学法経学部総合政策学科で特任講師を務める傍らで、2012年10月に千葉エコ・エネルギー株式会社を設立しました。当時は大学講師である私と学生3人で世にも珍しい再生可能エネルギー事業を軸に据えた大学発ベンチャーとしてスタートし、今年で10年目・11事業年度目を迎えています。

創業当時の顔ぶれ

営農型太陽光発電に出会い、自社で農業参入を果たす

起業当初は地域における再生可能エネルギー事業化支援に軸足を置き、太陽光発電・風力発電・水力発電・地熱発電・バイオマス発電と、再生可能エネルギー電源種のほとんどに関わってきました。その後、再生可能エネルギーの主軸は太陽光発電になると考える中で、持続可能な再生可能エネルギー事業のあり方を模索する中でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に出会い、現在は自社で農業参入も果たして、国と地域のエネルギーと食料の安全保障を確立していくための仕組み作りを進めています。

千葉市にあるソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の自社農場

博士号を受けた起業家は社会的信用を得る

博士号を受けた上での起業家として活動を始めたことは、創業当時もまた現在においても非常に大きな利点があったと感じています。20代の大学発ベンチャーの社長として活動を始めた当初も、博士号を持つことで専門家としての評価を受けることになり、地方自治体や企業とのコミュニケーションにおいても一定の社会的信用を持てることで、多くのネットワークを広げることに役立ちました。また、海外の政府機関や企業と関わる際にも博士であることの信用は高く、再生可能エネルギーをテーマにした国際会議に招聘されたり、政府高官との会合に招かれたりする機会を多く持つことが出来ています。

ソーラーシェアリングに関する韓国政府機関との業務協力協定調印式

実業を踏まえない制度・政策は実効性を持たない

現在は、自社でエネルギー事業と農業を行う傍ら、国内外におけるソーラーシェアリングの事業化支援、再生可能エネルギーや気候変動対策に関する地方自治体の政策立案支援、また複数の業界団体に理事として参画し政府に対するエネルギー政策の提言を行うなど、実業家と研究者という二足のわらじを履いて活動の幅を広げています。大学院で公共政策を学び、起業家として10年に亘る事業活動を行う中で、自身が関わるエネルギーや食料・農業といった問題に関与し、更に地域活性化を実現していくためには、実業と制度・政策の両輪で進めていくことが重要だと考えるようになりました。この10年、実業を踏まえない制度・政策は実効性を持たないどころか妨げにすらなり、一方で制度・政策とリンクしない現場の取り組みはある日突然梯子を外されることがあるといった現場を何度も目にしてきたことが背景にあります。

NPO法人国際ボランティア学生協会のメンバーによるソーラーシェアリング下での農業体験ツアー

 

後に続く若い世代の価値観と発想によって新しい社会を作ることを支えていきたい

ここ数年は、次の世代にバトンを渡していくための取り組みにも力を入れています。自社の役員・社員は20代~30代がほとんどで、私以外の取締役も大学生時代から参画してくれている創業メンバーです。私は間もなく40歳を迎えますが、人類全体の年齢構成から見ると35歳以下が過半数を占める中で、自身のような古い世代の価値観や発想ではなく、後に続く若い世代の価値観と発想によって新しい社会を作ることを支えていきたいと考えるようになりました。大学でのキャリア論や起業家教育の講義を引き受けているほか、大学生のインターンやソーラーシェアリングでのスタディーツアーなどを積極的に受け入れ、これからの社会を作っていく世代を育てることに力を入れ始めています。エネルギーと農業を通じて地域活性化に関わる中で、若い世代が自由で柔軟な発想によって未来を切り開いていく土壌を作ること、それこそが最も重要なテーマの一つであると捉え、次の世代に自信を持って手渡せる社会というバトンを、今後も作り上げていきたいと思います。

出典:広報誌ちばだいプレス https://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/chibadaipress/59/topic3/index.html

Writer:馬上丈司

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