藤木秀明(東洋大学経済学研究科公民連携専攻客員教授)
この度の理事改選により新任理事となりました東洋大学の藤木と申します。簡単に自己紹介をさせていただければと思います。
学生時代は経済地理を学びました
早稲田大学商学部で経済地理のゼミがあり、地方出身者が集まって地域活性化について考えることをしていました。山崎充先生の「「豊かな地方づくり」を目指して」 (中公新書)を輪読しながら、産業、経済、地方自治など様々な観点でものを考えることをしていました。地理学のゼミなので巡検(じゅんけん)という現地視察から学ぶ活動も重要なので、東京都台東区にある合羽橋(かっぱばし)道具街を見学したり、アウトレットモールの開発事例としてガーデンウォーク幕張を見学したりもしました。ふるさときゃらばんという地域活性化をテーマとした劇団の作品が大隈講堂で上演されるので観劇したこともあります。時代や技術が変わっても地理の感覚や地図を読んで考える力は必要とされます。時代が変わってもベースになるのを学ぶことができたので指導教授(故宮下史明教授)には大変感謝しております。
現在の専門分野はPPP論です
現在の専門分野は官民パートナーシップ(PPP)論です。PPP論に注目したきっかけとなったのは、大学のゼミ活動でした。利用されない道路をなぜ建設するのかといった公共事業の課題についてディスカッションする機会があり、どうしたら改善できるかということをゼミ活動で考えていたのですが、当時は英国統治下にあった香港が中国に返還される前に、民間の資金で空港が建設されたことを知りました。こうしたことが今後の日本にとって大切なのではないかと考え、何とかこの新しい動きに関わる仕事をしたいと考え、PFI(Private Finance Initiative)に関われる会社や団体に就職したいと考えて就職活動をしました。結果、東京三菱銀行(当時、現三菱UFJ銀行)に就職しました。PFIを支える業務に係ることなく銀行を卒業させていただきましたが、中小企業取引について実際の体験を持つことができ、公共体の資金調達に関わるアドミニストレーション業務を経験できたことは、現在の研究の役に立っています。
1人でマルチステークホルダーを経験
銀行就職以降の経験は複雑です。PFI/PPPにどうしても関与したかったので、そうした部署への配属辞令ができることを待つことができず、横浜銀行の研究所(浜銀総合研究所)に転職しました。そこで、PPP論の第一人者の根本祐二先生と出会い、すぐに東洋大学大学院のPPPスクールに入学しました。現在に至るまで活動の軸はPPPです。職歴を全て書くと長くなるのでご興味の方はresearchmapをご覧いただきたいのですが、大学、官庁、シンクタンクと様々な経験をしています。なかでも官庁の経験は貴重でした。内閣府の公共サービス改革推進室(現在は総務省に移管されている)の舘逸志さん(後に当学会で副会長を歴任されている)のもと、様々な地方公共団体と連携して公金の債権回収に関する民間委託に向けた研究会や研修を進めていました。併せて、内閣府経済社会総合研究所で官民連携研究の機会をいただいりすることができたのは大変貴重であったと思います。PPPを活用するためには、行動原理が異なる官・民の相互理解が大変重要ですし、広い意味での地域づくりのためのためには、地縁団体やボランティア、NPOとの協働を含めてマルチステークホルダーの協働の重要性が説かれることも多くあります。こうしたことを考えますと、民と官の両方の立場を経験し、現在は学を拠点としていることをもっと戦略的に活用していくことが課題だと考えています。
地域活性学会での活動
上述のような経緯から、官民パートナーシップ(PPP)論の中でも、金融・ファイナンスの観点から考えることが多いです。近年では、地域活性学会の研究大会において、地域金融機関の地域活性化に果たす役割についての研究を発表しています。学会内での活動で、理事に就任する前から行っていたものには、設立に賛同した金融部会、事務局長として運営に参加している官民パートナーシップ研究部会があります。通信会社のシンクタンクであるKDDI総合研究所の在籍経験を活かして、スーパーシティ研究部会の開催したシンポジウムに協力もしました。また、私自身、神戸大学経済学研究科において、博士号取得のための研究活動を行っております。当面は私自身の博士号取得に専念したいと思っておりますが、学術活動における地域活性化の位置づけ、社会人実務家研究者(当学会におけるJK)の活動、など、地域活性学会として取り組むべき課題にも協力してまいりたいと考えております。
石原美和本部理事と(研究大会懇親会)